team鳳

 天花寺が仕事を終えて寮に帰ってくると、食堂に明かりがついていた。
 覗くとteam鳳のメンバーが集まっていたが、どうも様子がおかしい。
「仕方がないよ。もう決まったことなんだろ」
 星谷の声にいつもの明るさが ...

星谷悠太

「んーじゃ、本日のお題を発表ー」
 そう言って南條が掲げたA4のコピー用紙にはこう書かれていた。
「綾薙学園殺人事件Part2」
 三年MS組、南條、申渡を除く二十三名は全員同じ表情をした。
 すなわち ...

星谷悠太

 一年生のときの綾薙祭は台風と重なっていた。
 星谷悠太の両親はこんな悪天候でも屋外の演目をするのかなと思いながら息子の通う学校に赴き、案の定中止のアナウンスを聞いてどうしよう帰ろうかと話していたところに、突然全校放送で息子が ...

星谷悠太

「星谷くん、休憩終わるよ」
 主演俳優に声をかけられて、星谷は携帯端末を慌てて鞄に入れた。
「なになにー? 珍しいじゃん、ずっと端末見てるの。大事な人からー?」
 からかわれて説明する。
「オレ、今日誕 ...

星谷悠太, 鳳樹

 星谷を寮まで送っていったら、誕生日パーティの会場だった

 それぞれ別の場所にいた楪、漣、暁は鳳からの謎のメッセージを受け取った。
「なんだい、これは。また鳳くんの悪ふざけ…」
 かい? と言う前に暁の端末 ...

人気急上昇若手俳優 爛れた夜の生活
 使い古されているが衝撃的な見出しは、印刷の荒い写真に被せられていた。
 鳳が夜の繁華街を女性と歩く写真だ。

 オンラインで集まった元team鳳は、ディスプレイ上で顔を見 ...

 他人の住まいを訪れるには非常識と言われる時間に鳳のマンションにやって来た星谷は、コンビニの袋から明日の朝食用の牛乳を冷蔵庫に入れる手を止めた。
「そういえば前来たときにも、マンションの植え込みに男の人がいたんですけど。なんの ...

柊が後輩になにか頼むことがあり呼び出すときは必ず料亭だ。
 帰る段になって足が痺れて畳に転がったことのある星谷は適度に足を崩しながら料理をいただいていた。 
 だが柊がなかなか要件を切り出さないので落ち着かなくなってき ...

スタミュ

 オープニグセレモニーを終えて綾薙祭の裏方で校舎を走り回っていた星谷は、一般客と思われる男性に声をかけられた。
「君、朝のステージに出ていた子だよね?」
 綾薙の講師のなかにもいるので、男の独特の雰囲気から業界関係者だ ...

星鳳

 緊急事態宣言が解除されてすぐ、星谷は公園で鳳と会った。
 星谷が「たまに外で歌いたくなるときに行く、普段からほとんど人のいない公園」だ。
「いいねえ。近所にこんなところがあったんだ」
「自粛期間中はここに来る ...

星鳳 La Vie en rose

 上がっていきなよという鳳に、いえ、ここで結構です、と月皇は答えた。
「早く戻らないと天花寺が先にうちに着いてしまうので」
 鳳は月皇のうしろに立つ空閑に声をかけた。
「大丈夫? 生きてる?」
「もうす ...

スタミュ

 私の初恋は小学校四年のとき。
 運動会のリレーで、半周遅れをひとりで挽回してテープを切ってゴールした星谷くんを好きになった。
 星谷くんは運動神経は抜群によかったけれど、そのほかは目立たない男の子だった。
  ...

星鳳 La Vie en rose

 駅のホームで気持ちを確認した星谷と鳳は、そのままどこに寄ることもなく鳳のマンションへ向かった。
 そして翌朝。時間的には、ほとんど昼。
「すすすすみませーんーっ!」
 ベッドから飛び降りて、星谷は土下座してい ...

La Vie en rose, 星鳳

 友人たちと集まって、最後に星谷と虎石が残った。
「時間あんなら、あと一杯だけ飲んでかね?」
「いいよ」
 という流れで、ふたりで虎石の馴染みの店に入った。
「星谷おまえ、相変わらず童顔なのに酒強いんだ ...

スタミュ

 休日に学園祭を見てきたと言う生徒を前に、教師は絶句した。
 聞こえなかったのかと思ったのか、受け持ちクラスの生徒、星谷悠太は繰り返した。
「オレ、綾薙学園に行く!」
 いや、待て。そんなつもりではなかった。 ...

La Vie en rose, 星鳳

 つきあいで参加した打ち上げだった。
 一次会の途中で抜けようと思っていたのに、タイミングを逃した。
 カラオケ店の通路で「遅くなりそう」とメッセージを送信していると、プロデューサーがわざわざ呼びに来た。
「鳳 ...

La Vie en rose, 星鳳

 冬休みの終わりにチーム鳳は鳳のマンションに集まった。
 年末年始は実家に帰っていた星谷は既に戻っていて、ほかのメンバーを出迎えた。
「せっかくだから、おせちっぽいものをね、持ってきたんだ」
 大きな紙袋を持っ ...

La Vie en rose, 星鳳

「星谷。指輪買ってよ」
 鳳から電話があったとき、星谷は炊飯器から保存容器にご飯を小分けしていた。今食べる分以外を冷凍するのだ。
 日本を離れるとき那雪が持たせてくれた「星谷くんでも作れる簡単レシピ集」は、星谷の健康維 ...

星鳳

 二月の終わりの週末、鳳は偶然駅で星谷と会った。
「おーとりせんぱーい」
 大きな紙袋を振り回して、星谷は駆け寄ってきた。
「わー。どうしてここにいるんですか? オレは実家の帰りなんですけど」
「駅ビル ...

team鳳, スタミュ

 ドレスコードは歌って踊れる格好
 綾薙を卒業した次の春、鳳は元教え子たちと野外劇場にいた。
 円形の舞台では星谷が青空の下、かつて鳳が雨音のリズムで踊ったあのダンスを披露していて、最後のポーズを最高の笑顔で決めた。 ...

プロポーズ, 星鳳

「洗面所の歯ブラシ、なぜ二本あるのですか」
公演で海外と行き来している柊は、日本にいるときは鳳の暮らすマンションに滞在する。
荷物を置いて、うがいを済ませて戻ってきた柊が鳳に問うた。
「あ。あれは星谷の」 ...

プロポーズ, 星鳳

 綾薙学園に入るまで星谷はそれほどミュージカルや映画を見てきたわけではなかった。もちろん本もたいして読んでない。
 演じるためには知識がいると知ってからは努めて関心を持つように心がけてきたが、自主練と学校とで空いた時間はほとん ...

プロポーズ, 星鳳

卒業してすぐ星谷はミュージカル俳優としてデビューが決まった。
綾薙祭が終わったあと、学園から大作ミュージカルの主演オーディションを受けるかと打診があり、数ヶ月のレッスンを経て挑み、合格したのだ。
元々希望していた大学進 ...

プロポーズ, 星鳳

「きみ、普通になったね」
客演に呼ばれた公演の初日のあと、鳳は綾薙時代から知っている評論家に声をかけられた。
「以前のきみはもっと異端の輝きを放っていた」
にっこり笑って受け流したが、翌日の新聞に同じことを書か ...

プロポーズ, 星鳳

「星谷って中坊んときは複数の運動部の助っ人やってたんだろ?」
 恋愛話から逃げ出そうとした星谷を、虎石が止めた。
「え、そうだけど」
「んじゃ、モテただろ」
「モテないよ」
「バレンタインにチョ ...

プロポーズ, 星鳳

「せんぱ〜い」
 節をつけて即興で歌う星谷の声が、鳳のマンションのリビングに響いた。
「どこ行っちゃったんですか〜?」
 家具が少なくて広い部屋なのでよく声が響く。
「やっぱり逃げちゃったんですね〜せん ...

プロポーズ, 星鳳

「なにしてるんだい?」
 控えの部屋で携帯端末を見ていた星谷に月皇遥斗が声をかけた。
「あ、すみません。遥斗さんのインタビュー、終わりました?」
 次の舞台で共演することになったふたりは雑誌の企画でホテルに来て ...

プロポーズ, 星鳳

 星谷の輝きはほかの役者に影響を及ぼす。だいたいにおいて良い方向に。
 星谷が求めている憧れの存在、尊敬する元指導者を演じていれば、星谷から過分な恵みを得ているといううしろめたさがいくらか薄れる。
 そんなふうに思い出 ...

プロポーズ, 星鳳

 マンションの地下駐車場に車を入れ、星谷はサイドブレーキを引いた。
 鳳がシートベルトを外してもドアのロックが解除されないので、自分で開けようとすると肩を掴まれた。
「触ります!」
 律儀に予告するのと唇を塞が ...

プロポーズ, 星鳳

 鳳が柊と電話で話しているあいだ、星谷はリビングで片付けをしていた。
 ここは鳳が綾凪在籍時から住んでいるマンションだが、ふたりで暮らせるところに移ることにした。
「ああ、そう。歌の練習ができる環境の物件がいい」