プロポーズ4

 マンションの地下駐車場に車を入れ、星谷はサイドブレーキを引いた。
 鳳がシートベルトを外してもドアのロックが解除されないので、自分で開けようとすると肩を掴まれた。
「触ります!」
 律儀に予告するのと唇を塞がれるのとほぼ同時だった。
 意外に優しく丁寧で、角度を変えて何度も舌を絡め取られる。
 星谷はどこでこんなことを覚えたのか。
 綾薙を出てから何年も経つし、ずっと会っていたとはいえ知らない時間のほうが長いのだと、鳳はキスに没頭していきながら考えた。
 長い拘束から解放しても、星谷は鳳の肩を掴んだままだった。
「シートベルト、外しなよ」
 星谷がつけたままのベルトを、鳳は指でつついた。 
「逃げないよ。さすがに、もう」
 鳳が星谷に覆い被さるようにしてシートベルトを外すと、そのまま抱きしめられた。
 「先輩、オレのこと好きですよね」
 好きっていうか。
 鳳は観念した。
「愛してるよ」

 寝室に入ると、星谷に背中から抱きつかれながら鳳はカーテンを閉めた。
「オレは開いててもいいですよ? どうせ外からは見えないし」
「真昼間だよ」
「先輩、そんなこと気にするんですか」
「……するでしょ」
 もっと言えばシャワーを浴びたいが、絡まった星谷が離れない。
 星谷の体温が高い。
 そう思ったが、もしかしたら鳳もそうなのかもしれない。
「先輩、オレは、病めるときも健やかなるときも死がふたりを分かつまで、ずっと先輩と遊んでいたいです」
 誓いの言葉みたいだよ、と苦笑しながら言うと、そのつもりです、と星谷は囁いた。

プロポーズ, 星鳳

Posted by ありす南水