鳳樹初スキャンダル
人気急上昇若手俳優 爛れた夜の生活
使い古されているが衝撃的な見出しは、印刷の荒い写真に被せられていた。
鳳が夜の繁華街を女性と歩く写真だ。
オンラインで集まった元team鳳は、ディスプレイ上で顔を見合わせた。
「マンションにマスコミが来てるから、鳳先輩はしばらくホテルに避難するって」
星谷が鳳と連絡を取り合っていることを知って、仲間たちは安心した。
「この記事については?」
月皇が星谷に問う。
「でたらめだって」
「いや、それはわかってるけどな」
天花寺が辟易したように言った。
記事の内容はこうだ。
鳳樹は女性が大好きで世界のすべての女性を愛していると公言し、出会う女性をかたっぱしから口説いている。高校時代の同級生は彼が女性を子猫ちゃんと呼び、複数の女性の携帯端末を預かり連絡を取り合っていたことを証言している。
「どっからどう読んでも虎石のことじゃねーか!」
「虎石自身が、これオレだな、と言っていた」
空閑が頷いた。
「写真も映画の打ち上げのときで、ほかにも大勢スタッフがいたんだって」
星谷の説明に月皇は顔をしかめた。
「それなのにふたりだけフレームに入れたわけか。悪質だな」
「世間様はこんなもんはすぐ忘れる。おまえも気にすんな」
「うん。ありがと、天花寺」
「姿が鳳先輩で中身が虎石くんかあ」
那雪がしみじみと言う。
「妄想するな、那雪。俺はそんな先輩は嫌だ」
「あはは。ごめん、空閑くん」
星谷は苦笑し、天花寺は頬杖をついた。
「まあ、鳳先輩には災難だが、星谷のことを書かれなくてまだよかっただろ」
だな、と空閑。
「それだと、これからデビューする星谷のほうにダメージがあったぞ」
「え、そう?」
星谷が目をぱちくりする。
「デビュー前にイメージがつくのはよくない」
月皇に教えられ、そうなんだあ、と星谷は他人事のように頷き、あーあー、と天花寺が割って入る。
「ついでだから言ってやるが、鳳先輩がまたいらん気を回しておまえらの関係がややこしくなる前に、おまえがしっかりしとけよ」
何度も巻き込まれている仲間たちに、星谷はごめんの意味で手を顔の前に掲げた。