(2)
【マクギリス だいたい二歳】
昌弘が資材のチェックをしていると、足元に気配を感じ、見ると、昌弘の膝くらいの身長のマクギリスがいた。結構勾配のきつい長い階段を、難なくマクギリスは登る。
「兄ちゃーん。またマクギリスが ...
(3)
【マクギリスだいたい四歳】
「あれ? クーデリア?」
「クーデリアだ!」
鉄華団の軽トラからトウモロコシ畑に降りたクーデリアに、クッキーとクラッカーが手を振った。フミタンも一緒だ。
「どうしたの?」 ...
(4)
【マクギリス大体五歳】
「ヤマギ、これ、なんてよむ?」
その日の子守り当番はヤマギだった。
モビルワーカーの整備中に勝手なことをしたら命に関わるので、マクギリスは腰にロープをつけられて、フックのついた端はヤ ...
(5)
【マクギリスだいたい六歳】
小さいマクギリスは食べるのが遅い。
鉄華団のメンバーは総じて早食いなので、いつも一番最後まで食堂に残るが、子守当番は昼休みが終わっても食べ終わるのを待つ。
「お、なんだ、マクギ ...
(6)
【マクギリスだいたい十一歳】
「あれ? そういや今日マクギリスは?」
武器庫の棚卸をしていたユージンが、誰にともなく訊いた。
「今日は学校が休みだから、まだ寝てる」
チェックリストに入力している ...
(7)
恋をする
アルミリアは床で寝ている人を初めて見た。
貧しい人のなかには家もベッドもなく地面に直接寝る人もいると聞いたことがあるが、ここは彼の家で格納庫でこんなところで寝なくても部屋はあるはずで。
もし ...
(8)
クリュセのお嬢様学校の前で、ユージンとシノは黒塗りの車にもたれていた。
「なあ、シノ」
「おうよ」
「女の黄色い声ってよく言ったもんだよな。俺はこの年になるまでそんなもん聞いたことがなかったんだなって、今つくづ ...
(9)
アルミリアがマクギリスにパーティのパートナーになってほしいと頼むと、俺、そういうのめんどくさいからと断られた。
「お、女の子はみんな男の子と一緒に行くのよ。マッキーは私がほかの男の子と行ってもいいの?」
食い下がる ...
(10)
マクギリス14歳くらい
頼まれていた書類を作ってオルガの端末に送ったマクギリスは椅子から立ち上がった。
「待て。どこに行く」
「格納庫」
「なにをしに」
「バルバトスの整備」
事 ...
(1)
閑静な住宅街よりやや庶民的な一角に、五階建てのその集合住宅はある。築そこそこ年数だがリフォームは行き届いていて、見かけによらずセキュリティは万全だ。
「へー、こんなになってるんだ」
着古したブルゾンを着てスポーツバッグ ...
(2)
年内の撮影はクリスマス前に終わる予定だったが、遅れに遅れた結果大晦日までずれ込んだ。
「良いお年をー」「良いお年をー」
なんとか年越しせずに撮影は終わり、出番はないが差し入れをして、そのまま最後まで立ち会っていたマクギ ...
(3)
オルガ・イツカが目を覚ますとそこは知らない家だった。
ソファで寝ていたがクッションが良かったので、からだはそんなに痛くない。それより気持ちが悪かった。
「おーい。大丈夫かー?」
ドアを開けて入っていたのはガエリ ...
(4)
「あの男はいないの?」
撮影が終わるや否やカルタ・イシューは共演したガエリオと、後ろのスタッフ一同に対して聞いた。
わけのわからないガエリオの代わりにADが答える。
「申し訳ありません、カルタさま。今日のシ ...
(6)
その日ガエリオの機嫌は誰が見ても悪かった。
どんなにスケジュールがきつくてもムードメーカーを務める人が珍しい。
「喧嘩でもしたのかな」
「ファリドさんと?」
「それはないんじゃね? 掌の上で転がされ ...
(5)
人に聞かれると自営業と答えるが、ガエリオの実家は名を聞けば誰でも知っている大企業の創業者一族の一家門だ。十八のとき家は継がない役者になると宣言して、勘当された。
長らく家族とは没交渉だったが、数年前、家を出てから生まれた妹が ...
(7)
炎天下でのアクションシーンで相手役が何度もNGを出した。
ちょっと疲れてきたかも。
覚えていたのはそこまでだった。
「あ。生きてた」
ガエリオが病院で目覚めたとき、ベッドサイドにいたのは三日月だった ...
(8)
「マッキー、さっきから全然喋ってなくない?」
ちゃっかりテーブルに混じったいつもの夕食時。三日月がガエリオにおかわりの茶碗を突き出しながら、隣に座るマクギリスに顔を向けた。
「食べてない」
マクギリスはほと ...
(9)
『言葉にしなくても、気持ちは通じていると思っていた。俺の気持ちは本物だから』
『言ってくれないとわからない』
『ごめん。愛してる』
雨のなか抱き合うふたりに被さり、タイアップ曲が流れてくる。
「は ...
(10)
一緒に暮らし始めたばかりの頃。
「おい、これはなんだ」
怒気を含んだ声に、プランターに水を遣っていたマクギリスが振り返った。
ガエリオは食器棚に彼が買ってきた皿やカップを収納しているところだった。手に ...
皿を洗う
「腹減ったー」
仕事に出ていた三日月は、マクギリスにドアを開けてもらうと、どかどかと歩いてダイニングに向かった。
「あれ?」
キッチンにガエリオの気配がないので、マクギリスを振り返った。
「急に仕事 ...
共犯
二月十四日午後九時過ぎ。
送りの車を途中で降りたところでコートのポケットのなかの端末が鳴った。
「今どこにいる?」
発信者が表示されているとはいえ、前置きもない。
「おまえの家を出たとこ ...
ロマンチスト
ガエリオは意外に本を読み、特に物語を好む。
正義感溢れる主人公の愛と勇気と希望に溢れる冒険の話だ。
ボードウィンは武の家柄だそうなので、自分を重ねているのだろう。
「早く大人になってモビルスーツに乗 ...
手料理
食堂は別にあるので使う者はほとんどいないが、士官学校の寮には調理場があった。
「…よし!」
休暇で実家に帰ったとき、コック長から猛特訓を受けた。
いけるはずだ。大丈夫。
ガエリオはコンロ ...
夏の夜空
レポートを仕上げてしまおうとキーボードを叩いていた指を、ガエリオは止めた。
いまいち集中できない。
「あー、くそ」
エアコンのきいた部屋の窓を開け、ベランダに出た。
しかめっ面は、湿度の ...
ラッキースケベ
雑誌を見ていて週末行ってみたい店があり、なあ、と顔を上げると、唇がマクギリスの額をかすった。
ふたりしてベッドに寝転がり、同じページを見ていたのだった。
「なんだ」
「ここ、行かないか?」
梅雨
講義に遅れてくる学生は珍しくないが、それが水も滴る美青年であれば話は別だ。
頭を振って水滴を払ったあと、寝坊しましたと遅刻の理由を告げたマクギリスに、学生たち同様見惚れていた教授が我に返り着席するよう指示する。
クールビズ
「暑い」
ガエリオのつぶやきを耳にして、マクギリスは顔をしかめた。
「蒸せる。暑い」
「いいかげんにしろ。ガエリオ。余計に暑くなる」
マクギリスとガエリオは、現在監査の内偵のために動いて ...