(5)
【マクギリスだいたい六歳】
小さいマクギリスは食べるのが遅い。
鉄華団のメンバーは総じて早食いなので、いつも一番最後まで食堂に残るが、子守当番は昼休みが終わっても食べ終わるのを待つ。
「お、なんだ、マクギリス。まだ食ってたのか」
昼食が遅れたダンテが自分のトレーを隣の席に置いて、マクギリスのトレーを覗き込んだ。
「どれどれ。スパム残してんのか。嫌いなのか?」
今日の子守り当番デルマが止めようとしたが、遅かった。スパムがぱくりとダンテの口のなかに消えた。
「あーっ、やっちまった」
「ん?」
「こいつは好物を一番あとにとっとくんだよ。今日は苦手なすっぱいの頑張って食べたのに。なあ」
ダンテのにーちゃんはひでえよなあ、とデルマは目に大粒の涙を溜めるマクギリスの頭を撫でた。
「あー、ほら。泣くな。ほら、ダンテにーちゃんのスパムを貰いな。ダンテさん、早く!」
ダンテは慌てて自分のトレーから手でスパムを掴んで、マクギリスの口のなかに突っ込んだ。ちょっと油のついた指のまま、マクギリスの目の縁を拭く。
「これ、うまいもんな! よし! おまえの好きなの覚えたぞ! 今度腹いっぱいスパム食わせてやるな!」
悲しい顔をしながら頬をもぐもぐさせたマクギリスは、頷いた。
「ひー、焦った。好物なら先に食えって」
「こいつ、とられたことないから」
コップの水を飲んでいるマクギリスを眺めながら、デルマが言った。
「食ってる途中に食べ物とられたことないし、だから食べるのも遅いし、好きなのも最後にとっとくんだ」
へー、とつぶやくダンテに、デルマは歯を見せて笑った。
「いいことだろ?」
ダンテもにかっと笑った。
「ああ、いいことだ」