(1)
初雪の日だった。
鉄華団所有のトウモロコシ畑に赤ん坊が捨てられていた。
「ひでえな。ありえねえ」
「こんな日に子どもを捨てるなんてよ」
「それにしては大事にされてる感じだけど」
三日月が抱えてき ...
(2)
【マクギリス だいたい二歳】
昌弘が資材のチェックをしていると、足元に気配を感じ、見ると、昌弘の膝くらいの身長のマクギリスがいた。結構勾配のきつい長い階段を、難なくマクギリスは登る。
「兄ちゃーん。またマクギリスが ...
(3)
【マクギリスだいたい四歳】
「あれ? クーデリア?」
「クーデリアだ!」
鉄華団の軽トラからトウモロコシ畑に降りたクーデリアに、クッキーとクラッカーが手を振った。フミタンも一緒だ。
「どうしたの?」 ...
(4)
【マクギリス大体五歳】
「ヤマギ、これ、なんてよむ?」
その日の子守り当番はヤマギだった。
モビルワーカーの整備中に勝手なことをしたら命に関わるので、マクギリスは腰にロープをつけられて、フックのついた端はヤ ...
(5)
【マクギリスだいたい六歳】
小さいマクギリスは食べるのが遅い。
鉄華団のメンバーは総じて早食いなので、いつも一番最後まで食堂に残るが、子守当番は昼休みが終わっても食べ終わるのを待つ。
「お、なんだ、マクギ ...
(6)
【マクギリスだいたい十一歳】
「あれ? そういや今日マクギリスは?」
武器庫の棚卸をしていたユージンが、誰にともなく訊いた。
「今日は学校が休みだから、まだ寝てる」
チェックリストに入力している ...
(7)
恋をする
アルミリアは床で寝ている人を初めて見た。
貧しい人のなかには家もベッドもなく地面に直接寝る人もいると聞いたことがあるが、ここは彼の家で格納庫でこんなところで寝なくても部屋はあるはずで。
もし ...
(8)
クリュセのお嬢様学校の前で、ユージンとシノは黒塗りの車にもたれていた。
「なあ、シノ」
「おうよ」
「女の黄色い声ってよく言ったもんだよな。俺はこの年になるまでそんなもん聞いたことがなかったんだなって、今つくづ ...
(9)
アルミリアがマクギリスにパーティのパートナーになってほしいと頼むと、俺、そういうのめんどくさいからと断られた。
「お、女の子はみんな男の子と一緒に行くのよ。マッキーは私がほかの男の子と行ってもいいの?」
食い下がる ...