(1)
初雪の日だった。
鉄華団所有のトウモロコシ畑に赤ん坊が捨てられていた。
「ひでえな。ありえねえ」
「こんな日に子どもを捨てるなんてよ」
「それにしては大事にされてる感じだけど」
三日月が抱えてきたゆりかごの代わりなのか丸いバスケットの中身を見て、団員たちは好きなことを言った。
小さなクッションの上に保温性のある布が敷かれ、寝かされた赤ん坊の上には毛布がかけられている。金色の髪の赤ん坊はチョコレートの入った缶を抱えるようにしていた。
「名前はチョコだな」
三日月が断定し、ビスケットが止める。
「ちょっと待って、三日月。そんな軽率に」
「なあ、これが名前なんじゃね?」
缶を開けたユージンが、なかから紙切れを取り出し、なになに? と字が読める面子が覗き込んだ。
「マック、ギリス?」
「マクギリスじゃないか?」
「おーい。おまえの名前か? マクギリス?」
呼びかけられたからか、赤ん坊は目を開けた。
「お。緑の目か。おまえ、美人になるな」
「男だよ、シノ」
三日月はそう教えたあと、オルガを見た。
「どうする? オルガ」
しかるべき施設に預けるかどうか。
団長のために赤ん坊の前を空けた団員たちは、真剣な顔で見守った。
「これもなにかの縁だ。この子はうちで育てる」
息を詰めていた団員たちは、オーッ! と歓声を上げた。
こうして、色が真っ白で綺麗な顔立ちの赤ん坊はマクギリスと名付けられ、鉄華団で育てられることになった。
マクギリスというのがチョコレート会社の名前であることには、その後も誰も気づくことはなかった。