星鳳

 緊急事態宣言が解除されてすぐ、星谷は公園で鳳と会った。
 星谷が「たまに外で歌いたくなるときに行く、普段からほとんど人のいない公園」だ。
「いいねえ。近所にこんなところがあったんだ」
「自粛期間中はここに来る ...

La Vie en rose, 星鳳

 友人たちと集まって、最後に星谷と虎石が残った。
「時間あんなら、あと一杯だけ飲んでかね?」
「いいよ」
 という流れで、ふたりで虎石の馴染みの店に入った。
「星谷おまえ、相変わらず童顔なのに酒強いんだ ...

La Vie en rose, 星鳳

星谷高三から卒業後数年までのお話。
こちらを元に本にしました。
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La Vie en rose, 星鳳

 つきあいで参加した打ち上げだった。
 一次会の途中で抜けようと思っていたのに、タイミングを逃した。
 カラオケ店の通路で「遅くなりそう」とメッセージを送信していると、プロデューサーがわざわざ呼びに来た。
「鳳 ...

La Vie en rose, 星鳳

 冬休みの終わりにチーム鳳は鳳のマンションに集まった。
 年末年始は実家に帰っていた星谷は既に戻っていて、ほかのメンバーを出迎えた。
「せっかくだから、おせちっぽいものをね、持ってきたんだ」
 大きな紙袋を持っ ...

La Vie en rose, 星鳳

「星谷。指輪買ってよ」
 鳳から電話があったとき、星谷は炊飯器から保存容器にご飯を小分けしていた。今食べる分以外を冷凍するのだ。
 日本を離れるとき那雪が持たせてくれた「星谷くんでも作れる簡単レシピ集」は、星谷の健康維 ...

星鳳

 二月の終わりの週末、鳳は偶然駅で星谷と会った。
「おーとりせんぱーい」
 大きな紙袋を振り回して、星谷は駆け寄ってきた。
「わー。どうしてここにいるんですか? オレは実家の帰りなんですけど」
「駅ビル ...

プロポーズ, 星鳳

星谷くんが鳳先輩にプロポーズするまでのお話(卒業後)

もう一遍同じテーマで別のお話を加えて本になっています。
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プロポーズ, 星鳳

「洗面所の歯ブラシ、なぜ二本あるのですか」
公演で海外と行き来している柊は、日本にいるときは鳳の暮らすマンションに滞在する。
荷物を置いて、うがいを済ませて戻ってきた柊が鳳に問うた。
「あ。あれは星谷の」 ...

プロポーズ, 星鳳

 綾薙学園に入るまで星谷はそれほどミュージカルや映画を見てきたわけではなかった。もちろん本もたいして読んでない。
 演じるためには知識がいると知ってからは努めて関心を持つように心がけてきたが、自主練と学校とで空いた時間はほとん ...

プロポーズ, 星鳳

卒業してすぐ星谷はミュージカル俳優としてデビューが決まった。
綾薙祭が終わったあと、学園から大作ミュージカルの主演オーディションを受けるかと打診があり、数ヶ月のレッスンを経て挑み、合格したのだ。
元々希望していた大学進 ...

プロポーズ, 星鳳

「きみ、普通になったね」
客演に呼ばれた公演の初日のあと、鳳は綾薙時代から知っている評論家に声をかけられた。
「以前のきみはもっと異端の輝きを放っていた」
にっこり笑って受け流したが、翌日の新聞に同じことを書か ...

プロポーズ, 星鳳

「星谷って中坊んときは複数の運動部の助っ人やってたんだろ?」
 恋愛話から逃げ出そうとした星谷を、虎石が止めた。
「え、そうだけど」
「んじゃ、モテただろ」
「モテないよ」
「バレンタインにチョ ...

プロポーズ, 星鳳

「せんぱ〜い」
 節をつけて即興で歌う星谷の声が、鳳のマンションのリビングに響いた。
「どこ行っちゃったんですか〜?」
 家具が少なくて広い部屋なのでよく声が響く。
「やっぱり逃げちゃったんですね〜せん ...

プロポーズ, 星鳳

「なにしてるんだい?」
 控えの部屋で携帯端末を見ていた星谷に月皇遥斗が声をかけた。
「あ、すみません。遥斗さんのインタビュー、終わりました?」
 次の舞台で共演することになったふたりは雑誌の企画でホテルに来て ...

プロポーズ, 星鳳

 星谷の輝きはほかの役者に影響を及ぼす。だいたいにおいて良い方向に。
 星谷が求めている憧れの存在、尊敬する元指導者を演じていれば、星谷から過分な恵みを得ているといううしろめたさがいくらか薄れる。
 そんなふうに思い出 ...

プロポーズ, 星鳳

 マンションの地下駐車場に車を入れ、星谷はサイドブレーキを引いた。
 鳳がシートベルトを外してもドアのロックが解除されないので、自分で開けようとすると肩を掴まれた。
「触ります!」
 律儀に予告するのと唇を塞が ...

プロポーズ, 星鳳

 鳳が柊と電話で話しているあいだ、星谷はリビングで片付けをしていた。
 ここは鳳が綾凪在籍時から住んでいるマンションだが、ふたりで暮らせるところに移ることにした。
「ああ、そう。歌の練習ができる環境の物件がいい」

プロポーズ, 星鳳

 レストランの個室に、久しぶりに元チーム鳳のメンバーが揃った。
 星谷が新しい住所を伝えたあと、
「オレ、ここで鳳先輩と一緒に暮らすことになったよ」
 と言ったところ、全員微妙な顔をした。
「え…星谷く ...

プロポーズ, 星鳳

 やあ、と辰己はまるで昨日綾薙の校門前で別れたかのように手を挙げた。
「ひっさしぶり! 変わらないね!」
「星谷は変わったんだよね。結婚おめでとう」
「え? えへへ。ありがとう」
 なんで知ってんの?  ...

La Vie en rose, 星鳳

 カフェにて星谷と鳳のことを説明していた月皇が、ああ、そうそう、と上着のポケットから携帯端末を取り出した。
「星谷がファン向けに配信してるチャンネルに、天花寺翔様回というのがありまして」
「天花寺翔様回」
 既 ...

プロポーズ, 星鳳

 昼夜が逆転することも珍しくないので寝室の窓には遮光カーテンを使っているが、隙間から少し陽が差し込んできている。
 目が覚めた星谷は何気なく顔の向きを変えて苦笑した。
 鳳は星谷に背中を向けて眠っていた。
 寝 ...

プロポーズ, 星鳳

 天花寺が袱紗のなかから取り出した大きな祝儀袋に、鳳は若干引いた。
「このたびはご結婚おめでとうございます」
「う……」
 ホテル一階のコーヒーラウンジで人目を引くやり取りは避けたく、言葉を詰まらせる。

プロポーズ, 星鳳

 新居に引っ越したもののなかなか荷物の整理ができず、久しぶりにふたり揃って家で夕食を取ったあと、星谷が洗い物をしているあいだ鳳はリビングで積んだままの段ボール箱を開けていた。
「星谷。これ、おまえの?」
 鳳が持ち上げ ...

プロポーズ, 星鳳

 すみません、先輩。今日泊めてください。
 星谷から来たメッセージに、いいよ、と返信してから鳳は駅の改札を通った。
 終電ではないがもうかなり遅い。綾薙の二学期の終業式はもう終わっているが、年内ぎりぎりまで学校でやるこ ...

星鳳

「四季せんぱーい。冬沢せんぱーい」
舞台の幕間にロビーに出た四季は、別の出口から出てきた星谷が手を振るのに気づいた。
クラスメイトの誰かと来ていたのかと思ったすぐあと、後ろに鳳の姿が見えた。 
四季にとって星谷 ...

星鳳

「こないだはごめんね。大学案内できなくて」
 喫茶店で鳳に謝られて星谷は慌てて手を振った。
「いえ! 暁先輩によくしてもらいましたから! すっごく楽しかったです!」
「そ? よかった。暁も君が案内するよりマシだ ...

星鳳

「これ、鳳先輩の紐だ」
 天花寺が実家から寮に持ち帰った「高級菓子」をラッピングしていた赤い紐を、じっと見ていた星谷が言った。
「鳳先輩の紐?」
 天花寺が首を傾げる。
「鳳先輩が髪をくくってた紐」 ...

星鳳

 家で台本を読んでいた星谷の携帯端末が鳴った。
 柊からだ。
 今日鳳は漣の家でみんなと集まって飲むと言っていた。
 柊も一緒のはずだがどうしたのだろう。
「星谷くんですか。すみませんが鳳を」