周囲の反応2
レストランの個室に、久しぶりに元チーム鳳のメンバーが揃った。
星谷が新しい住所を伝えたあと、
「オレ、ここで鳳先輩と一緒に暮らすことになったよ」
と言ったところ、全員微妙な顔をした。
「え…星谷くん。ずっと先輩のマンションで暮らしてたよね?」
戸惑う那雪。
「え…オレ、一応実家住まいだったんだけど」
戸惑う星谷。
「なに言ってんだ、野暮助。いつ連絡しても鳳先輩のマンションにいただろうが」
「そ、そうだっけ」
「ひょっとして、おまえと鳳先輩。これまでつきあっていなかったのか?」
怪訝そうな空閑。
「う、うん」
星谷は恐る恐る訊いてみた。
「もしかして、みんなもっと前からオレと鳳先輩がつきあってると思ってた…?」
全員が頷いた。
「えーっ! みんな言ってよー! オレ、なかなか自分の気持ちに気づかなかったのにー!」
「言えるか、野暮助!」
「鳳先輩に浮いた噂がないのは星谷とつきあってるからだと思っていたが、そう考えると先輩もだいぶアレだな」
「アレってなに!」
「そのくらいにしてやれ、天花寺、空閑。星谷もそのへんにしておけ」
「そのへんてなに!月皇!」
「星谷くん。とりあえずおめでとう」
「ありがとう、那雪…」
星谷は酒と料理のあいだに突っ伏した。
「ああ、そういえば、前に兄さんが、おまえはご祝儀を出さないのか? って言ってたのはこのことか」
「あ、遥斗さんには熨斗袋に入ったご祝儀貰った!」
星谷が勢いよく顔を上げる。
「ご祝儀って、結婚したわけでもあるまいし」
天花寺の言葉に、星谷の顔が赤くなった。
「……て、おい?」
実は、と星谷は携帯端末を取り出し、写真を表示した。
「先月、海外で」
わあ、と那雪が思わず声を上げた。
写っていたのは、青空のもとチャペルの前にいる礼装姿の星谷と鳳だった。
「すっごくかっこいいね! ふたりとも!」
「ありがとう、那雪」
サマになりすぎていてスチル写真のようだと空閑が言う。
このままチャペルの宣伝に使えそうだと。
「そうなんだよ。わりと衣装で着てるよねこんな感じの、って先輩とも笑ったんだ」
「今でもそういうふうに呼んでるのか? 先輩って」
「うん。先輩も星谷って呼ぶよ?」
「いや、空閑。今はそこじゃないだろう! この野暮助! ほんとにご祝儀案件じゃねーか!」
天花寺に叱られて星谷は首をすくめた。
「でも法律的にはしてないから」
「そういう問題じゃないっ!」
天花寺は、ったく、おまえはいくつになっても、とブツブツ言い続ける。
「ほ、星谷くん、写真はこれだけ?」
話を逸らそうとした那雪に、ほかにもあるよと星谷が見せた。
星谷が鳳をお姫様抱っこしているものと、鳳が星谷をお姫様抱っこしているものと、どちらもふたりとも最高の笑顔で写っている。
「星谷のほう、だいぶ無理してないか?」
指導者と教え子だった頃ほど差はないが、それでも鳳の方が背が高い。
「意地と全筋力を動員した」
空閑に向かって星谷は胸を張る。
「あ、こっちは家族写真だね。星谷くんのご両親も一緒だったんだ。こちらは鳳先輩のご両親? 柊先輩も!」
「みんなに祝福してもらえたんだな」
よかったな、と言う月皇に星谷は嬉しそうな笑顔を向けた。
そして、ああ、幸せなんだな、と仲間たちは思った。
おい、と天花寺が月皇をつついた。
「サプライズパーティ開こうぜ。やるっつたら、星谷はともかくあの先輩サマは来ないだろうからな」
「そうだな。元クラスメイト全員に声をかけてみよう」
忙しい毎日を送っているみんなだが、きっと集まるだろう。