デート
「四季せんぱーい。冬沢せんぱーい」
舞台の幕間にロビーに出た四季は、別の出口から出てきた星谷が手を振るのに気づいた。
クラスメイトの誰かと来ていたのかと思ったすぐあと、後ろに鳳の姿が見えた。
四季にとって星谷は甘ったれで若干厚かましいところのある後輩だ。高校生の学年違いというのは大きいが、一年違いだとまだ近しくその分生意気にも見える。
だが鳳と一緒の星谷はひたすら無邪気だった。
二年の歳の差なのか、高校二年と大学生という立場の違いか、元指導者と教え子という関係のせいか。
鳳がドリンクを奢ってくれて、四人で少し話した。
誰にでも懐く星谷はいつの間にか冬沢とも他愛無い会話を交わすようになっていて、冬沢も以前の星谷への態度が嘘のように柔らかく接している。四季に対するより饒舌なくらいだ。
四季はたまに会話に加わりながら、興味のままに星谷と鳳を見ていた。
教え子は可愛いが少なくとも四季は卒業後教え子と一緒に観劇しようとは思っていないし、鳳のように可愛くて仕方ないという眼差しは持ち合わせていない。
次の幕を告げるブザーが鳴り、四季と冬沢は星谷たちと分かれて席に戻った。
「デートだったな」
着席した冬沢がぽつりと言った。
星谷と鳳のことだ。
なるほど。あれはそういうものだったのか。
「オレたちもデートか?」
「違う」
語尾に怒りが含まれていたので、この手の冗談は今後冬沢にはやめておこうと思った。