マリッジブルーの終焉
2016.6.26発行
6月のイベントに合わせて書いた結婚がテーマのお話です。
18歳以上の閲覧を禁止いたします。
(1)
昼の光が入らないようカーテンを閉め切った部屋で、吐く息と衣擦れの音だけが聞こえる。
まとわりつく衣服は邪魔だが、鍵をかけてあるとはいえ、いつドアがノックされるかわからないので仕方ない。
最初の痛みをやりすごし呼吸を ...
(2)
ガエリオがシャワーを浴びてガウンの腰ひもを結びながら戻ってくると、マクギリスはギャラルホルンの制服を着て部屋を出て行こうとしているところだった。
「は? おまえ、なにやってんの」
「仕事に戻る」
「夜中だぞ」 ...
(3)
ファリドとボードウィンは婚姻による結びつきを求めていたが、両家にはそれぞれ子どもがひとりしかいなかった。ファリド家当主の外子であるマクギリスが呼び寄せられたのは、後継の問題を避けるためだ。
マクギリスが初めてガエリオとキス ...
(4)
目を開けると裸で床に寝ていた。
そのまま壁の時計を見ると、それほど時間は経っていない。同じく裸で寝ているマクギリスに目をやると、長い睫毛を伏せて深く眠っている。服で隠れないところにいくつも跡がついていて、これは当分口をきい ...
「次回予告」
「火星に赴任したマクギリスとガエリオ。ガエリオが期待する甘々な新婚生活も束の間(いや、そもそもあったのか?)マクギリスが火星に降りたまま無断外泊。得体の知れない民間警備会社にあったガンダムフレームバルバトスに夢中になり火星基地に戻って ...
(1)
閑静な住宅街よりやや庶民的な一角に、五階建てのその集合住宅はある。築そこそこ年数だがリフォームは行き届いていて、見かけによらずセキュリティは万全だ。
「へー、こんなになってるんだ」
着古したブルゾンを着てスポーツバッグ ...
(2)
年内の撮影はクリスマス前に終わる予定だったが、遅れに遅れた結果大晦日までずれ込んだ。
「良いお年をー」「良いお年をー」
なんとか年越しせずに撮影は終わり、出番はないが差し入れをして、そのまま最後まで立ち会っていたマクギ ...
(3)
オルガ・イツカが目を覚ますとそこは知らない家だった。
ソファで寝ていたがクッションが良かったので、からだはそんなに痛くない。それより気持ちが悪かった。
「おーい。大丈夫かー?」
ドアを開けて入っていたのはガエリ ...
(4)
「あの男はいないの?」
撮影が終わるや否やカルタ・イシューは共演したガエリオと、後ろのスタッフ一同に対して聞いた。
わけのわからないガエリオの代わりにADが答える。
「申し訳ありません、カルタさま。今日のシ ...
(6)
その日ガエリオの機嫌は誰が見ても悪かった。
どんなにスケジュールがきつくてもムードメーカーを務める人が珍しい。
「喧嘩でもしたのかな」
「ファリドさんと?」
「それはないんじゃね? 掌の上で転がされ ...
(5)
人に聞かれると自営業と答えるが、ガエリオの実家は名を聞けば誰でも知っている大企業の創業者一族の一家門だ。十八のとき家は継がない役者になると宣言して、勘当された。
長らく家族とは没交渉だったが、数年前、家を出てから生まれた妹が ...
(7)
炎天下でのアクションシーンで相手役が何度もNGを出した。
ちょっと疲れてきたかも。
覚えていたのはそこまでだった。
「あ。生きてた」
ガエリオが病院で目覚めたとき、ベッドサイドにいたのは三日月だった ...
(8)
「マッキー、さっきから全然喋ってなくない?」
ちゃっかりテーブルに混じったいつもの夕食時。三日月がガエリオにおかわりの茶碗を突き出しながら、隣に座るマクギリスに顔を向けた。
「食べてない」
マクギリスはほと ...
(9)
『言葉にしなくても、気持ちは通じていると思っていた。俺の気持ちは本物だから』
『言ってくれないとわからない』
『ごめん。愛してる』
雨のなか抱き合うふたりに被さり、タイアップ曲が流れてくる。
「は ...
(10)
一緒に暮らし始めたばかりの頃。
「おい、これはなんだ」
怒気を含んだ声に、プランターに水を遣っていたマクギリスが振り返った。
ガエリオは食器棚に彼が買ってきた皿やカップを収納しているところだった。手に ...
皿を洗う
「腹減ったー」
仕事に出ていた三日月は、マクギリスにドアを開けてもらうと、どかどかと歩いてダイニングに向かった。
「あれ?」
キッチンにガエリオの気配がないので、マクギリスを振り返った。
「急に仕事 ...
共犯
二月十四日午後九時過ぎ。
送りの車を途中で降りたところでコートのポケットのなかの端末が鳴った。
「今どこにいる?」
発信者が表示されているとはいえ、前置きもない。
「おまえの家を出たとこ ...
ロマンチスト
ガエリオは意外に本を読み、特に物語を好む。
正義感溢れる主人公の愛と勇気と希望に溢れる冒険の話だ。
ボードウィンは武の家柄だそうなので、自分を重ねているのだろう。
「早く大人になってモビルスーツに乗 ...
手料理
食堂は別にあるので使う者はほとんどいないが、士官学校の寮には調理場があった。
「…よし!」
休暇で実家に帰ったとき、コック長から猛特訓を受けた。
いけるはずだ。大丈夫。
ガエリオはコンロ ...
夏の夜空
レポートを仕上げてしまおうとキーボードを叩いていた指を、ガエリオは止めた。
いまいち集中できない。
「あー、くそ」
エアコンのきいた部屋の窓を開け、ベランダに出た。
しかめっ面は、湿度の ...
ラッキースケベ
雑誌を見ていて週末行ってみたい店があり、なあ、と顔を上げると、唇がマクギリスの額をかすった。
ふたりしてベッドに寝転がり、同じページを見ていたのだった。
「なんだ」
「ここ、行かないか?」
梅雨
講義に遅れてくる学生は珍しくないが、それが水も滴る美青年であれば話は別だ。
頭を振って水滴を払ったあと、寝坊しましたと遅刻の理由を告げたマクギリスに、学生たち同様見惚れていた教授が我に返り着席するよう指示する。
クールビズ
「暑い」
ガエリオのつぶやきを耳にして、マクギリスは顔をしかめた。
「蒸せる。暑い」
「いいかげんにしろ。ガエリオ。余計に暑くなる」
マクギリスとガエリオは、現在監査の内偵のために動いて ...
指輪
「これ、お前の目の色と同じ」
ガエリオが差し出したのはエメラルドの指輪だった。
「母上の宝石箱にあったんだ。おまえにやる」
「いらない」
素気無く断り、マクギリスは読んでいた本に目を落と ...
赤面
シャワーを浴びていると誰かが部屋に入ってくる気配がした。
誰かというか、ロックしてあるので入ってこられるのはガエリオしかいないのでほうっておくと、脱衣所でごそごそ音がしておもむろにガエリオが入ってきた。
当然? ...