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目を開けると裸で床に寝ていた。
そのまま壁の時計を見ると、それほど時間は経っていない。同じく裸で寝ているマクギリスに目をやると、長い睫毛を伏せて深く眠っている。服で隠れないところにいくつも跡がついていて、これは当分口をきいてもらえない有様だ。
こんなことになるに至った原因の女性については、ガエリオの心から完全に消え去っていた。元々ひきずるような大きな存在ではない。いろいろ条件が良かった。それだけだ。
からだを起こして膝に肘をつく。
マクギリスがどう思っているのか知らないが、ガエリオには後継を残すという跡取りならではの責務があり、そのためにあれこれしているのだ。数年前に妹が生まれたが、だからといってあとを頼むというわけにはいかない。そう思っていたのだが、もういい。もうやめた。
そもそも妹は、ガエリオがマクギリスと仲がいいのを見た両親が、万一に備えて儲けたのだと踏んでいる。そうでなければ今更ガエリオの子でも通るような、年の離れたきょうだいが出来ないだろう。
マクギリスが小さく身動ぎした。空調は効いているが、起こしてシャワーを使わせベッドで寝かせないと、朝酷いことになる。
目を開けたら不機嫌なんだろうなと思いつつ、ガエリオは脱ぎ散らかしたシャツを取り上げマクギリスにかけた。髪が乱れて顔にかかり、子どものときを思い出させる寝顔を、もう少しだけ見ていることにした。
マクギリスのようにガエリオに向き合う人間はいない。だったらほかはいらない。
「愛してる」
耳元で囁いた。
「おまえがいればそれでいい」