コードネームロックオン・ストラトスことライル・ディランディは、トレミーの一室で頭を抱えていた。
彼の前にはひとつの端末。
展開されているのは、事務作業にまつわる情報だ。
「ソレスタルビーイングに来てまで、書類に ...

皆にさよならを告げてから、どのくらい経っただろう。

「どうして僕のデータを消さない」
突然話しかけられて、僕は少し驚いた。
リボンズ・アルマークの意識は頑なに対話を拒んで、随分長い間沈黙が続いていた。

リボンズ・アルマークとの決戦で深手を負った刹那が目覚めたとき、情勢はあらかた落ち着いていた。
どさくさ紛れに姿を消したトレミーを、アロウズに決起した軍、つまりはカティ・マネキンは見逃してくれ、 カタロンは反政府組織の冠を外され ...

小型艇を操縦しながら、ロックオンは数時間前のヴェーダとの交信を思い出していた。
ミレイナをイアンとリンダがブリッジの外に連れ出したあと、スメラギが通信を引き継いだ。

  戻ってこられるのなら、戻っていらっしゃい。 ...

叱ってくれてありがとう。
頼ってくれてありがとう。
笑いかけてくれてありがとう。
励ましてくれてありがとう。
甘えさせてくれてありがとう。
一緒に戦ってくれてありがとう。

僕は、皆を ...

出撃前の最後の機体チェックが慌しく行われている。
ぎりぎりまで休んでいろとイアンに言われたティエリアは、控え室でコーヒーを飲んでいた。
インスタントではあるが、自分の淹れるコーヒーは美味しい、とティエリアは思っていた。 ...

他人のコンテナを覗いたのに、理由はない。
アニューに裏切られラッセは負傷し、それが原因でマイスターのひとりは戦力外状態だ。
このまま三機のガンダムで戦うことになるかもしれない。
あえて理由をつけるなら、その覚悟 ...

わざと少し乱暴にしたのに、刹那は顔を歪めただけだった。
「痛いと言えばいいのに」
医療用保冷ジェルを刹那の両頬にあて、落ちないように顎の下からまわしたタオルの端を、頭のてっぺんで結ぶ。
「…おたふく風邪の子ども ...

怖い夢を見て目が覚めた。

時計を見ると眠りについてからまだたいして経っておらず、僅かな休息時間に出来る限り疲れを取っておかねばならないのにと歯噛みする。
このところよく夢を見る。
いろんな夢だ。
楽 ...

煙草を没収された。
トレミーに来てすぐに。
「全艦禁煙だ。当然だろう」
可愛い顔した教官殿は、見た目通り委員長で風紀委員だった。
「そもそも健康被害を被るとわかっているものを、馬鹿高い税金を払ってよく吸 ...

「限りなく恋だと思うんだよね」
「なにが」
「ティエリアのロックオン…えーと、先代の、への感情」
デリカシーに欠けるにもほどがあるアレルヤの表現だが、聞いているのが刹那なのであまり問題はない。
「実は四 ...

トリニティ兄弟の来訪によって、トレミー内は引っ掻き回された。
三人が乗ったガンダムが去り、誰もがほっと一息ついた頃、ただひとりだけ立ち直れない少年がいた。
展望室の隅っこで、刹那は膝を抱えて座っていた。
「なに ...

太平洋第六ポイントの手前でエクシアとヴァーチェを確認して、ロックオン・ストラトスの緊張は溶けた。
「ロックオン。刹那とティエリアだ」
キュリオスのアレルヤから通信が入る。
彼の声にも安堵が滲んでいた。

「ロックオン、さしてくれ」
刺してくれ、と聞こえて、ロックオンはぎょっとした。
地上でのミッションを終えて着替えたばかりのマイスターは、娯楽室で寛いでいた。
ティエリアだけがシャワールームを出てから姿を見せない ...

ロックオンはベッドの前で立ち竦んでいた。
目の前にあるのは、ただのベッドではない。
天蓋付きの、一体何人寝られるんだという広さの、その昔この地方でマハラジャと呼ばれた男が使っていたというベッドだ。
絶倫じゃない ...

とあるアジアの下町。
合流ポイントである大衆食堂に現れたティエリアは、ロックオンの腕にすがりついていて、 ヤキソバを食べていたアレルヤが、心配そうに箸を置いて立ち上がった。
「近道だから市場を抜けてきたんだが、肉屋が集 ...

トレーニングルームはラッセ・アイオンの部屋みたいなものだ。
入っていくと、やはりいた。
「珍しいな、ロックオン」
「さすがに一週間もミッションなしじゃあな」
体がなまって気持ち悪いし、急な出撃のときベス ...