ガエマク

二月十四日午後九時過ぎ。

送りの車を途中で降りたところでコートのポケットのなかの端末が鳴った。

「今どこにいる?」

発信者が表示されているとはいえ、前置きもない。

「おまえの家を出たとこ ...

ガエマク

ガエリオは意外に本を読み、特に物語を好む。

正義感溢れる主人公の愛と勇気と希望に溢れる冒険の話だ。

ボードウィンは武の家柄だそうなので、自分を重ねているのだろう。

「早く大人になってモビルスーツに乗 ...

ガエマク

食堂は別にあるので使う者はほとんどいないが、士官学校の寮には調理場があった。

「…よし!」

休暇で実家に帰ったとき、コック長から猛特訓を受けた。

いけるはずだ。大丈夫。

ガエリオはコンロ ...

ガエマク

レポートを仕上げてしまおうとキーボードを叩いていた指を、ガエリオは止めた。

いまいち集中できない。

「あー、くそ」

エアコンのきいた部屋の窓を開け、ベランダに出た。

しかめっ面は、湿度の ...

ガエマク

雑誌を見ていて週末行ってみたい店があり、なあ、と顔を上げると、唇がマクギリスの額をかすった。

ふたりしてベッドに寝転がり、同じページを見ていたのだった。

「なんだ」

「ここ、行かないか?」

ガエマク

講義に遅れてくる学生は珍しくないが、それが水も滴る美青年であれば話は別だ。

頭を振って水滴を払ったあと、寝坊しましたと遅刻の理由を告げたマクギリスに、学生たち同様見惚れていた教授が我に返り着席するよう指示する。

ガエマク

「暑い」

ガエリオのつぶやきを耳にして、マクギリスは顔をしかめた。

「蒸せる。暑い」

「いいかげんにしろ。ガエリオ。余計に暑くなる」

マクギリスとガエリオは、現在監査の内偵のために動いて ...

ガエマク

「いらっしゃいませ」

にこやかに振り向いた妹は、ガエリオだと気づくと笑顔を消した。

「なんだ、お兄さま」

「ご挨拶だな」

アルミリアは今アーヴラウでブティックを営んでいる。

...

ガエマク

湖に面した窓を開けると濃い緑の匂いがした。

「いいところだな!」

浮かれているガエリオを一瞥して、荷物を置いたマクギリスは、

「そうだな」

と答えた。

今朝方いきなり官舎に迎 ...

ガエマク

「これ、お前の目の色と同じ」

ガエリオが差し出したのはエメラルドの指輪だった。

「母上の宝石箱にあったんだ。おまえにやる」

「いらない」

素気無く断り、マクギリスは読んでいた本に目を落と ...

ガエマク

シャワーを浴びていると誰かが部屋に入ってくる気配がした。

誰かというか、ロックしてあるので入ってこられるのはガエリオしかいないのでほうっておくと、脱衣所でごそごそ音がしておもむろにガエリオが入ってきた。

当然? ...

ガエマク

「ファリド三尉はいるか」

勤務が終わりどこかに寄ろうとガエリオがマクギリスを誘っているところに、違う部署の上官が来た。

「自分ですが」

ロッカールームの椅子に座っていたマクギリスが立ち上がる。

ガエマク

メールで招待状を送ると、爆笑するマクギリスの動画で返信が来た。

「帰還がその日だから俺は行けないが(笑)誕生日おめでとう(笑)二十五歳の(笑)誕生日パーティーが(笑)盛り上がることを(笑)祈ってる」

爆笑で締め ...

ガエマク

義父が私的に使っている家のひとつから出て、マクギリスは大きく息を吐いた。

あの人が多忙な身でよかった。でなければ半日と言わず三日、あるいは一週間は拘束されただろう。

ガエリオと過ごす為に使っている部屋はボードウ ...

ガエマク

聖ギャラルホルン学園。そこは禁断の秘密の花園。

始業前の静かな礼拝堂のドアが開き、なかで祈りを捧げていた生徒が振り返った。

「遅いぞ、ガエリオ」

「すまなかった、マクギリス。校門で下級生たちに捕まっ ...

ガエマク

蔦の絡まるレンガの建物、中庭に小さな噴水、アンティークの家具。こじんまりとしているが温かみのある屋敷だった。

尤もこじんまりというのは比較がボードウィン邸だからで、一個人の邸宅としては十分広い。

アポなしで来た ...