(1)
告白日和
1
賑わうオープンカフェの片隅。
兵部はカフェオレを飲みながら、宙に浮かせた文庫本を読んでいた。甘すぎず物足りなさすぎず。この店の砂糖の加減を気に入っている。
「よう。久し振り」
(2)
2
モナークのアパートメントの一室。
アラームをセットした時間より早く起きた。目を開けてもまだ夢を見ているのかと思った。寝室のありとあらゆるものが浮いている。
「えーと」
ヒノミヤはなにが起こってい ...
(3)
3
モナークのヒノミヤ行きつけのデリ。
オフィス勤務のときには帰りに寄って夕食を調達することにしている。
ショーケースの前で惣菜を選んでいると、奥のカフェから小走りに出てきた女性に声をかけられた。財団事務方 ...
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5
突然の兵部からの電話は、命令形で始まった。
「僕が死ぬまで僕を愛せ」
近くにいると確信して見渡すと、歩道の植え込みの傍に立つ兵部と目が合った。パーカーにクロップドパンツという、見た目はなんとも可愛らしい ...
(6)
月が綺麗ですね
兵部が一線から退いたあとの隠れ家、通称隠居屋敷。
通いで家事をしに来る人以外暮らすのは兵部ともうひとり、それから月の半分くらい滞在するヒノミヤだけ。だからついうっかりした。
月が綺麗だの、お ...
(7)
2
隠居屋敷。天気は雨。兵部とギリアムの読書時間。
仕事に出ていたヒノミヤが帰ってきた。
門から屋敷まで距離があるため、車から降りたあと濡れた。お手伝いさんから渡されたタオルで頭と服を拭きながら、書斎に入っ ...
(8)
3
ある日の隠居屋敷。
庭に出したテーブルで、ギリアムはぎこちない手つきで紅茶をいれていた。
「はい、兵部」
褒めてもらおうと期待一杯の顔で差し出されたティーカップを、
「ありがとう」 ...
(10)
5
クィーンオブカタストロフィ号。
隠居屋敷から葉が帰って来た。
「真木さーん。紅葉姐。じじい、あれ、なんなの」
葉は普段船で生活していないが、少佐に会ったあとは必ず寄って行く。
それを知っ ...
(11)
6
隠居屋敷。離れ。夜。
「兵部、ここにあるのソフトドリンクみたいなボトルだけどアルコールだから」
冷蔵庫を開けた風呂上がりのヒノミヤが注意する。間違えて飲むなよ、という意味だ。寝間着姿の兵部はソファに座っ ...
(12)
7
真夜中に目が覚めた。
こんなことはあまりない。
ギリアムはからだを起こし、きょろきょろと周りを見た。お手伝いさんは晩御飯の片付けをすると帰る。兵部とヒノミヤは離れにいる。母屋にはギリアムしかいない。 ...
(13)
8
欧州某所。下町のバー。
何度か仕事で組んだことのある他組織の人間と飲んだ。
「ところで、ヒノミヤ。おまえ、あの兵部少佐と暮らしてるんだって?」
「え、いや、なんすか、それ」
兵部は死んだ ...
【少佐が恋人ができたことを三幹部に宣言したときの話】
真木たち三人が打ち合わせしている部屋。
「ヒノミヤと付き合うことにしたから」
兵部が入ってきていきなり言った。
打ち合わせ時間は伝えていたが、勝手に留守にして戻ってこないので、いつものことなので勝手に ...
極大テレポートで薫が元の世界に帰る途中にアンリミ世界の少佐に会う話
明石薫は夜空に浮いた状態のまま、目をぱちくりさせた。
「あれ? 京介? あれ?」
「やあ、クィーン。いい夜だね」
二階のベランダから手を振る兵部京介は、彼女の知る兵部少佐とは少し違う。薫は辺りをきょろきょろ ...