アン兵

告白日和

賑わうオープンカフェの片隅。
兵部はカフェオレを飲みながら、宙に浮かせた文庫本を読んでいた。甘すぎず物足りなさすぎず。この店の砂糖の加減を気に入っている。
「よう。久し振り」

アン兵

モナークのアパートメントの一室。
アラームをセットした時間より早く起きた。目を開けてもまだ夢を見ているのかと思った。寝室のありとあらゆるものが浮いている。
「えーと」
ヒノミヤはなにが起こってい ...

アン兵

モナークのヒノミヤ行きつけのデリ。
オフィス勤務のときには帰りに寄って夕食を調達することにしている。
ショーケースの前で惣菜を選んでいると、奥のカフェから小走りに出てきた女性に声をかけられた。財団事務方 ...

アン兵

合衆国某所。
人混みのなかを歩いていると、急に隣に気配を感じた。
見ようとするより早く腕を組まれ、銀髪と学ランの肩がヒノミヤの視界に入った。
「久しぶりだな」
そうだ、本当に。

アン兵

突然の兵部からの電話は、命令形で始まった。
「僕が死ぬまで僕を愛せ」
近くにいると確信して見渡すと、歩道の植え込みの傍に立つ兵部と目が合った。パーカーにクロップドパンツという、見た目はなんとも可愛らしい ...

アン兵

月が綺麗ですね

兵部が一線から退いたあとの隠れ家、通称隠居屋敷。
通いで家事をしに来る人以外暮らすのは兵部ともうひとり、それから月の半分くらい滞在するヒノミヤだけ。だからついうっかりした。
月が綺麗だの、お ...

アン兵

隠居屋敷。天気は雨。兵部とギリアムの読書時間。
仕事に出ていたヒノミヤが帰ってきた。
門から屋敷まで距離があるため、車から降りたあと濡れた。お手伝いさんから渡されたタオルで頭と服を拭きながら、書斎に入っ ...

アン兵

ある日の隠居屋敷。
庭に出したテーブルで、ギリアムはぎこちない手つきで紅茶をいれていた。
「はい、兵部」
褒めてもらおうと期待一杯の顔で差し出されたティーカップを、
「ありがとう」 ...

アン兵

何年か前。皆本の住むマンション。
かつてクィーン達と暮らした、今は皆本ひとりの部屋。
「兵部、僕と関係を持とう」
無精髭の皆本の顔の向こうに天井が見えた。
「…は?」
兵部の両手 ...

アン兵

クィーンオブカタストロフィ号。
隠居屋敷から葉が帰って来た。
「真木さーん。紅葉姐。じじい、あれ、なんなの」
葉は普段船で生活していないが、少佐に会ったあとは必ず寄って行く。
それを知っ ...

アン兵

隠居屋敷。離れ。夜。
「兵部、ここにあるのソフトドリンクみたいなボトルだけどアルコールだから」
冷蔵庫を開けた風呂上がりのヒノミヤが注意する。間違えて飲むなよ、という意味だ。寝間着姿の兵部はソファに座っ ...

アン兵

真夜中に目が覚めた。
こんなことはあまりない。
ギリアムはからだを起こし、きょろきょろと周りを見た。お手伝いさんは晩御飯の片付けをすると帰る。兵部とヒノミヤは離れにいる。母屋にはギリアムしかいない。 ...

アン兵

欧州某所。下町のバー。
何度か仕事で組んだことのある他組織の人間と飲んだ。
「ところで、ヒノミヤ。おまえ、あの兵部少佐と暮らしてるんだって?」
「え、いや、なんすか、それ」
兵部は死んだ ...

アン兵

真木たち三人が打ち合わせしている部屋。

「ヒノミヤと付き合うことにしたから」

 兵部が入ってきていきなり言った。

 打ち合わせ時間は伝えていたが、勝手に留守にして戻ってこないので、いつものことなので勝手に ...