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「生体CPU」
新型モビルスーツのデータをチェックしていて、思わず眉をひそめた。
部品扱いということは、彼らには一切人間に対する配慮は必要ないということだ。
そういう研究がどこかで進められているとは聞いていた。 ...

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まず誰の秘書かというと、マリューさんの秘書です。
二十歳過ぎの金髪美人で、頭もよくて自信もあって、というタイプ。

マリューさんも仕事の面では信頼してますが、
まあ、若いコなので、ところどころ浅はかなのは、そ ...

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「なんだよーっ!」

家に入ったフラガの耳に飛び込んでくる子どもの声。
「またかよ」
と、呟きつつフラガがキッチンに入ると、
「買って買って買って! 買えよ、買えったら買えーっ!」
と、泣きわ ...

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少年の家にはいつもコーヒーがある。
一ヶ月に一回、箱に入ったのがどこからか届けられる。
少年が覚えている限り、欠かすことなく。

買っているのではない。
両親の友達が送ってくれるのだ。
母親に ...

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「なあ、マリュー。あれ、どこだっけー?」

キッチンでお昼の用意をしていたマリューが、エプロンで手を拭きつつ廊下に出てみると、普段開けない納戸の前に踏み台を引っ張ってきて、フラガがその上に座っていた。
「なあ、あれ。 ...

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「なにしてんの」
ソファに座って背中を丸めているマリューに覆い被さると、マリューは悲鳴を上げた。
「な、なにっ、ムウっ!?」
「なにって、なに驚いてんの。…で、それ、なに?」
マリューが膝に抱えているの ...

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鉄の門の間を抜け、黒い車が煉瓦を敷き詰めた道を走っていく。
車が止まったのは、かつてバナディーヤで彼が軍から与えられていたのと同じくらい立派な屋敷の前だった。

「いらっしゃい。アンディ」
出迎えるのはここの ...

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小さな手に指を近づけると、きゅっと握られた。
赤ん坊は金色の髪をしているが、角度によっては俺に、別の角度だとマリューに似ているように見えた。
遺伝子というのは本当に不思議だ。
儚いものへの無条件の慈しみのような ...

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目覚めたらひとりだった。
時計を見ると午前二時。
一度隣に入ってきたのは覚えているので、また出て行ったのだろう。
待っていようかと思ったが、心細くなってきて、ガウンを羽織ってベッドを出た。
何年住んでも ...

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今度は手を離さない

どんなときもあなたの傍に

あんまり久し振りだったので、どちらも緊張した。
数えてみると、一緒にいた時間より離れていた時間のほうが長くて、そのことに気づいたふたりは笑い合った

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眠りから覚めると、マリューはまず確認する。
なにもかも夢でないか。

自分はあの沢で死体になっていて、彼が帰ってきた夢を見ているのかもしれないと思う。
そんな夢をずっと見たいと思っていたから。
目が覚 ...

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暗闇を歩く 君と手を携えて

マリューが目を開けると、彼の顔がすぐ近くにあった。
「寝てるときにキスしないでって」
だって可愛い顔で寝てるからさ」
悪びれもせず笑うと、フラガはマリューの前髪を撫でた。 ...

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心残りはなにもない。
あえて探すなら彼女のことくらいか。

マリューは泣くだろうか。
俺は彼女が思い切り笑った顔を見たことがない。
笑うことに途惑うような笑顔しか思い出せない。
わざわざ襟のフ ...

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いらない子

要らない、と言われた。
おまえは、要らないと。

なぜなのかわからなかった。
それまでは大事にされていたのに。

病気をしたのがいけなかったのかもしれない。
具合が悪 ...

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「フラガの扱いなのだが」
窓を挟んだ眼下にアークエンジェルを望み、キサカはマリューに切り出した。
最終戦で大破したアークエンジェルは、まもなく廃艦になることが決定していて、マリューが白亜の戦艦を眺めるのは、これが最後と ...

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名残

あるいは感傷

だからといって思いは褪せない

降る夜

ぱらぱらと音を立て、屋根に雨が落ちる。
床にマットレスを敷いた寝床には慣れたが、この湿度は相変わらず不快だ。

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どん、というここではよく聞く爆発音がした。

一見すると玩具のような形に作られた地雷は、子どもが興味を持ちやすく、死に至りはせずに体の一部を損なわせる。
医師を乗せたバギーが出て行くのと入れ替わりに、避難民を乗せた小 ...

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バギーで向かった指定場所で待っていたのは、本当に彼だった。
驚いたことに五体揃っていて、笑ってさえいる。
二日前に、いくつかのルートを経てノイマンに伝えられた「フラガ少佐帰還」の報は、情報元がアンドリュー・バルトフェル ...

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ドミニオンからローエングリンが発射されたとき、フラガは闇雲に動いたわけではなかった。
射出エネルギー量と目標地点、一時的にでもシールドで抑えられる距離と角度を計算して、ストライクを動かした。
尤も、自分が助かるとは思わ ...

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一歩一歩、地面を踏みしめながら、フラガは彼にしては珍しく緊張を感じた。
進むごとに、マリューに近づいている。
そう思うと、顔が強張った。

今はただ、生きていてほしい。

どうして自分はもっと早く帰 ...

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2004年5月にサイトにUPしたSSを元に、本として発行したものです。
当時お手に取ってくださった方々、ありがとうございました。
自分的に好きな作品で、発行後年数が過ぎたことから、全文サイトに掲載したいと思います。 ...