Others 9
小さな手に指を近づけると、きゅっと握られた。
赤ん坊は金色の髪をしているが、角度によっては俺に、別の角度だとマリューに似ているように見えた。
遺伝子というのは本当に不思議だ。
儚いものへの無条件の慈しみのような気持ちはあるが、自分がこの子どもの父親なのだという自覚は、正直なところ、まだ持てない。
確かなのは、この子どもを産んだ女への気持ちだけ。
ひょっとすると俺の親父は、自分のことさえ愛していなかったのかもしれないと、この子を見たとき、初めてそんなふうに思った。
赤ん坊がふにゃふにゃと泣き出した。
習ったとおりにぎこちなく抱き上げ、連れて行くと、ベッドに体を起こして待ち構えていたマリューが、胸元を緩めて乳を含ませる。
マリューは俺が初めて見る種類の満ち足りた顔をしている。マリューに言わせると、俺も同じなのだそうだが。
ふいに涙が零れそうになった。
幸せで胸が塞がれるなんて、俺の人生ではないようだ。
俺はちゃんとした父親になれるだろうか。
いつか三人で、宇宙(そら)に上がろう。