マクアル

アルミリア・B・Fは厄祭戦後三百年を経た動乱期に活躍した政治家である。
 当時の支配階層の頂点に立つ家に生まれたが権力の移り変わりにより没落し、のち地球圏連合の議員となり、富裕層のなかに燻る不満を掬い上げ法整備を進めた。

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 右手を窓枠にかけ、アルミリアは上半身を二階から乗り出した。
 下は隙間なく生い茂った植え込みだ。
 腕を伸ばしさらに間合いを測っていると。
「お嬢様っ!」
 後ろからぶつかるように抱きしめられた。 ...

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経済圏の、というのはやはり無理だったが、学校に通うことは許可された。父はもう、娘がおとなしくしていてくれるならなんでもいいというふうだった。

「毎日熱心ですね」
声をかけられて、アルミリアは読んでいた本から目を上げ ...

マクアル

 バクラザンの支援を受け、アルミリアは結婚という足枷なしに家を離れた。
 アパートを借りてひとりで暮らすつもりだったが、侍女がついてきた。

ヴィーンゴールヴは一年中緑が多いが、そのときは特に花盛りだった。

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 アフリカンユニオンの空気の良い山間で、イズナリオ・ファリドは暮らしていた。
「いいところですね」
 アルミリアが言うと、皮肉と捉えたのかイズナリオは鼻で嗤った。
ファリド家が取り潰しになった際に十分な資産が渡 ...

マクアル

ぬくもりのなか目を開けると、マクギリスの腕のなかだった。
 昨夜アルミリアはマクギリスと一緒にパーティに行き、そのままファリド邸に泊まった。マクギリスは夜のパーティには、極力出なくていいようにしてくれているが、どうしても避けら ...

マクアル

 イズナリオに教えられた町には、現在も少年を商品として扱っている店がいくつか存在した。
売られてきた子、騙されて連れてこられた子、攫われてきた子など様々な子どもがいて、当時「商品」を集めていた男は、アルミリアが手を尽くして探し ...

マクアル

マッキー、私、あなたに会いたいの。
あなたのところに行きたいの。
 私の元に残されたのは、あなたの血で染められた今の私には小さすぎてはめられない手袋と、あなたが置いていったアグニカ・カイエルの本だけ。
 私、あ ...

マクアル

 ガエリオを妹が訪ねてきたとき、ボードウィン家にはジュリエッタも来ていた。
 案内なしで居間まで来ると、アルミリアはふたりの顔を順に見てからつまらなさそうに言った。
「お邪魔だったかしら」
「いえ、全然」 ...

マクアル

マクギリスの最後の言葉を受け取らなかったのはガエリオだ。
 許すことはできたし、そうしたほうが楽だった。だがしなかった。
後悔はしていない。

マクアル

 事務所として借りている貸しビルの一室に、モンターク商会の社長がやってきたのは、アルミリアが選挙に出ると決めてしばらくしてのことだった。
 ニュースで立候補のことを聞き、支援をしてもいいと言う。
「けどまあ、本気ですか ...

マクアル

 この世界に神という概念はない。かつての名残の儀式のいくつかがあるだけだ。
 七家門の意匠が組み込まれたステンドグラスの光が幻想的な空間を作る教会も、当主の交代などに用いられる儀礼の場だ。
 ドレスを着て家で待っていた ...