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この世界に神という概念はない。かつての名残の儀式のいくつかがあるだけだ。
七家門の意匠が組み込まれたステンドグラスの光が幻想的な空間を作る教会も、当主の交代などに用いられる儀礼の場だ。
ドレスを着て家で待っていたアルミリアは、迎えに来たマクギリスと共に車で教会に着いた。
マクギリスも正装だった。
右手の手袋をはずしてアルミリアの前に跪き、いつかのように訊ねる。
「アルミリア。私と結婚してくれますか?」
今日がその日だとは聞いていなかった。父もいない。だがアルミリアはマクギリスに答えた。
「もちろんよ」
手の甲に唇が押し当てられ、次いで少しからだを起こしたマクギリスは顔を近づけアルミリアと唇を重ねた。
キスをしたのはそのときだけだ。
それが永遠の誓いとなった。
あなたは私の人生の輝く光のかけらのような存在。
いつかアルミリアが最後の日を迎えるとき、彼女の魂は婚約パーティのときのあのバルコニーで彼を待つだろう。
迎えに来たマクギリスの手を取り、アルミリアはマクギリスに頬を寄せて囁くのだ。
「ずっと愛してたわ、マッキー」
ずっと、あなたを愛しているわ。
光のかけら
2017年5月28日