inn

 レンガ造の二階建て。
十の客室と受付につながる部屋がひとつ。
武器の持ち込みは黙認されているが、建物内での揉め事はご法度。
営業許可など当然ない。

 受付の椅子に座って居眠りをしていると、客がやっ ...

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「ひょっとして僕が最初に渡した宿泊料は、とっくに尽きているのではないだろうか」
 ティエリアが切り出したとき、ニールは客室のシーツを洗濯機に突っ込んでいた。
「どうだったかな」
 この半年間、一枚だけ減った札束 ...

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 ティエリアが買い物から帰ってきたとき、ニールは受付の椅子に座って煙草を吸っていた。
 喫煙は習慣ではなく、チェックアウトする客からたまたま貰った。
ティエリアは驚いた顔をして、次に灰皿代わりにしていたコーヒーカップに ...

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 珍しくニールが買い物に出た。
 ティエリアが客にコーヒーを出していたからだが、市場に着いてすぐに後悔した。
「よう、ニール。別嬪さんに出て行かれたのか?」
 顔見知りの商店主は誰も彼も同じことを言った。 ...

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 ティエリアがいなくなって、ニールの生活のなにかが
変わったかというと、そんなことはなかった。
 客は相変わらず受付で無駄に時間を過ごしていったし、ニールもコーヒーを出した。
だがそれはティエリアが来てからの日 ...

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 おそらく動揺していたのだ。自覚なしに。
だから気づくのが遅れた。
 肉体を離れヴェーダの一部となったことに動揺していた僕は、リボンズ・アルマークに撃たれたからだを仲間が回収したことは知っていても、その後そのからだが治 ...

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背中に走る痛みに顔を顰めた。
短く整えられている爪が皮膚を傷つけることはないが、当然と言うべきか力は結構ある。
「ちょっとだけ手ぇ緩めて」
 ティエリアは小さく頭を振り、もどかしくなったのか腰を揺らした。 ...