創作

その一画は古い住宅街だ。
幅が狭くて車は入れない通りを、晴と黒沢は歩いていた。
彼方此方の庭先の紫陽花が目を楽しませてくれる時節で、目的の家の前にも大きな鉢があった。
辺りでも一際古いと思われる生垣と木の塀に囲 ...

創作

一番最初に付き合った18以降、ひとりという時期がほとんどなかった晴だが、このあいだの別れ方がこたえて、当分恋愛沙汰からは遠ざかっておこうと思っていた。
だから志月が突飛なことを言い出してもこちらにその意志がないのだから大丈夫、 ...

創作

部屋に戻って明かりをつける前から、留守番電話のボタンが点滅しているのがわかった。
今時固定電話にメッセージを残す仕事関係者はいないが、一応確かめ、リビングにいくつも積み上げてあるダンボールを横目で見ながら消去した。
忙 ...