(7)ちょっと嫌い
食事に誘いにきたガエリオが、マクギリスの執務机の端に座った。
「いつまで仕事をしてるんだ」
「もう終わる」
「さっきも聞いた。あれから何分経った?」
「だからもう終わる」
「あと五分でそれ、強制終了させるからな」
マクギリスが視線を離さない端末を指でつついて、ガエリオは足を組んで机の上に居座った。
「そういえば、おまえ、エリオン公と親しくしているのか?」
ふいに思い出したようなガエリオの言葉に、マクギリスが目線だけ上げた。真っ直ぐ瞳を見る。
「ちょっと、耳にした」
なにを? 噂を? どんな?
マクギリスが黙ると、ガエリオはそれ以上訊ねてこなかった。
彼はいつもそうだ。複雑な事情を抱える友人が言いたがらないことには、決して触れない。
仕事は終わっていなかったが、マクギリスは端末を切った。
「いいのか?」
「終われと言ったのはおまえだぞ」
笑いながら椅子から立ち上がる。
「待たせたな。行こうか」
ガエリオは、優しい。
その優しさが、マクギリスを傷つける。