(1)賢くて綺麗
ラスタル・エリオンはいくつも住居を持っているが、そのなかのいくつかは複数いる愛人との逢引き用で、さらにそのなかのひとつ、郊外の住居は人目を避ける相手、実質マクギリス専用だ。
大体お互いがお互いの都合で相手を呼び出すのだが、今回はラスタルが呼び、マクギリスが来たのが深夜だったので行為が終わったのが朝だった。
「シャワーを使うか」
「…お先にどうぞ」
引っ張り上げるのも面倒なのか、マクギリスは裸の腰のあたりでもたついている毛布をそのままにして、頭を腕で包んだ。白い獣が休んでいるようだ。
ラスタルがベッドを降りようとしたとき、端末が着信を告げた。表示はイオクだ。
あとでかけ直すと告げようと出ると、思いのほか話が長くなった。裸でベッドに掛けたままでいると、腰にマクギリスの腕が絡みついてきた。
マクギリスはラスタルの背中に唇を押し当て、今は萎えているものに指を絡ませた。
行為は基本受け身で自分からはなにもしない、そのくせやればやたら巧いマクギリスが、促してもいないのにこんなことをしてきたことはない。
やめさせようと姿勢を変えたが、逆に足のあいだに顔を埋めてきた。這わされた舌の感触に思わず息を飲む。
「ラスタル様? どうなさいましたか?」
「いや。ちょっと猫がな」
「猫? ああ、野良猫が迷い込んでくると仰っていましたね。今日も来ているのですか?」
「ああ。悪さをしているところだ」
「それはけしからん! 私が駆除にまいります!」
「いや、まあいい。躾ければかわいいところもある」
俯いているのでマクギリスの表情は見えないが、質量を増したものをわざと音を立て口での奉仕を続けている。
「イオク。かけ直す」
さすがに余裕がなくなってきて、返事を訊く前に通話を切ると、シーツの上に端末を放り投げてその手でマクギリスの頭を掴んだ。
呼吸のタイミングを邪魔されて、マクギリスは苦しげな声を漏らすが、ラスタルは自身の良いようにマクギリスの頭を動かした。
もう一度足を開かせてもよいが、せっかく自分から咥えてきたのだからこの際堪能させてもらおう。
「…飽きたのですが」
「それが通ると思うか」
下から睨みあげる緑の瞳が濡れている。
雑種のこの獣は、賢く綺麗であばずれだ。