整備兵Aの日記

1月25日
今日でいよいよ特務が終了する。
色々と大変だったアークエンジェルとGの製造だが、ラミアス大尉の存在が毎日を楽しいものに変えてくれた。
最後に飲みに誘うと息巻いていた同僚がいたが、個人的に誘えば上官侮辱罪の適用は必至。俺は皆でする飲み会に、皆でラミアス大尉を誘ってみることにする。大尉は酔うと陽気になって、近くの人間をばしばし殴るが、大尉に張り倒されるのなら本望。
もし一緒に飲めなくても、「お疲れ様でした。これからもよろしくお願いします」と忘れず言おう。地道な努力を続ければ、いつかは奇跡が起きるかもしれない。
今日も一日がんばるぞ!

1月26日
ザフトのヤツラに急襲されたが、なんとか命拾いする。
ラミアス大尉も無事だった。
よかった。
そして大尉は艦長になってしまった。
副長だったら、格納庫で一緒に働けたのにちょっと残念。
しかしいいことも。
生でフラガ大尉を見た。
エンデュミオンの鷹こと、ムウ・ラ・フラガ大尉を!
作業服にサインして、と言ったら、勘弁してくれよ、と苦笑いされた。
しかしかっこいい。足も長い。
フラガ大尉にメビウス・ゼロの整備を頼まれる。
憧れの有線式ガンバレル付メビウス・ゼロの整備!
「あ、でもパーツがないよなあ」とフラガ大尉は言ったが、心配御無用。
アークエンジェルにはいつメビウス・ゼロをお迎えしても大丈夫なように、パーツを一式ご用意してあるのだった。
俺が張り切って修理した機体で、フラガ大尉は出撃していった。
自らが発案された作戦で、見事敵のウラをかいた。
「いよっしゃー、うひょー」などの独特のノリもかっこいい。
今度真似してみようかな。

1月27日
アルテミスに到着。
やれやれ、と思ってたら銃を持ったヤツらがフラガ大尉を連れて行ってしまった。
ええええー?艦長と副長と大尉が連れて行かれて、俺たちは食堂に集められた。
俺たちどうなっちゃうんだろう。と心配していると、ヤマトがアルテミスの司令官をひっくり返らせた。
びっくり。
女の子みたいな顔をしているのに、キレると怖いタイプみたい。
気をつけようっと。
ザフトが攻撃してくれたので、アルテミスから逃げることができた。
艦長は軟禁されていたそう。
俺たちの艦長に! なんてことするんだ、ユーラシア!

2月3日
デブリ帯から物資を調達するとのこと。
必要物資の選別をしなくてはならないので、ブリッジクルーがその任にあたる。
助手としてヘリオポリスの学生たちも協力する。
偶然ユニウスセブンを発見し、水が見つかったのはよかったけど、皆複雑な気分に。
追悼の意を表して黙祷する。
その後、ヤマトがザフトの脱出ポッドを拾ってきた。
前に脱出艇を拾ってきたとき副長にあれだけ叱られたのに、懲りないヤツだ。
なにが出てくるのかな、と格納庫の隅っこで見ていると、ピンクの髪の美少女出現。
おおっ、無茶苦茶可愛い!と思った瞬間、艦長のお姿が目に入る。
ああっ、艦長、ごめんなさいーーーっ!
俺にとってこの宇宙で一番美しいのは艦長ですーーーっ!
いや、実際、艦長、コーディネイターの美少女と並んでも、全然遜色ないくらい綺麗なんですけど…
艦長みたいな人に選ばれる男って、どんなヤツなんだろう。

2月7日
やっと友軍と合流できる~!
あーよかったよー!全員うきうき。
でもアラートに行ったら大尉が寝袋で仮眠をとってた。
なんでアラートで?
大尉はまた戦闘があると思ってるのかなあ。
邪魔しないようにそっと引き返して、こないだ助けたザフトの女の子の部屋の近くを通りかかったら、歌が聞こえてきた。
すごいいい感じ。
いいもの聞いたなあ~。
ザフトではあのコはアイドルなんだと、誰かが言ってたけど、ほんとかもしれない。
…サインもらっとこうかなあ。
戦争終わったら価値出るかもしれないし…
ザフトはやっぱり攻撃してきた。
それも先遣隊と合流しようというまさにそのときに!
ああ、なんかどんどん先遣隊がやられているみたい!
どうしてもっといっぱいで来ないんだよー!
助けに入ったアークエンジェルもなんかヤバいみたい…
で、バジルール副長がザフトの女の子を人質にして窮地を脱出。
…でもなんか複雑。
フラガ大尉はヤマトに仕方ないって話してたけど、大尉も複雑そう…

2月11日
もうすぐ第八艦隊に合流する。
合流したら、フラガ大尉は元の所属に戻ってしまうんだろうか。
今のうちにやっぱりサインを貰っておくべきか悩むが、メビウス・ゼロの整備を頼まれてお願いできず。
OSの調整はヤマトがやっていて、フラガ大尉に文句を言っている。
大尉に楯突くなんて十年早すぎ。
でも下手なこと言ってキレられたら嫌なので黙っておく。
するとなんと艦長が格納庫に…!
お優しい微笑を浮かべられて、ふわふわとメビウス・ゼロのコクピットに…!
本来ならここが艦長の職場。
艦長の支持の元、Gの整備をする日を夢見ていましたのに、どんな運命の悪戯か、こんなことに…
あるはずだった未来を思って悔し涙を流していると、艦長はヤマトとお話を。
あああああーーーっ!!!
ヤマトが艦長の手を握っているー!
握手だってわかってるけど、でも握ってるー!
あああーっ、でも俺は艦長の元気なお姿を見られただけで幸せです!
明るい気分で休憩に入ると、フラガ大尉を見つけた。
お話がしたいと思ったが、読書中なので声をかけるのをためらっていると、ザフトがまた攻撃してきた。
しつこいなあ。
大尉は飛び出していったが、出て行くとき、俺に読書中だった雑誌を渡した。
「ちょっと預かっといて」と頼まれて、すっごく嬉しかった。
大尉が真剣な顔で読んでいたのは、経済誌かなそれともなにかの専門誌かな、と表紙を見ると、おっとびっくり、アダルト雑誌だった。
見つかったら没収、しかも俺の失点になるので、慌ててつなぎの下に隠す。
…そういう大尉も俺は好きです。

2月13日
ようやく第八艦隊と合流する。
全員格納庫にて提督をお出迎えという命令だったので、俺も並んで提督を待つ。
艦長は提督に会えてとっても嬉しそうだった。
俺たちが大変な思いをしてここまで来たことを、提督はちゃんとわかってくれているようで、俺はちょっと嬉しかった。
艦長たちが提督と話をしているあいだ、どんどんと物資が積み込まれてくる。
うわー、ちゃんとした補給だーありがたいよー。
正式な命令はまだ下っていないけど、第八艦隊のヤツらが言うには、俺たちはこのままアークエンジェルで任に就くようだ。
艦長も一緒かなーと思っていると、「ラミアス大尉は第八艦隊に戻ってきてくれたらいいのによ」とか第八艦隊のヤツがぬかしやがった。
…俺らの艦長なのに。
むかついたから、ガンとばしてやったら、向こうもとばしかえしてきた。
危うく喧嘩。
マードック軍曹に叱られた。
ちょっと大人気なかった、
いやいや、艦長に関することにはいつでも熱い自分でいなくては、と逡巡していると、地球に降下するという正式な命令が下った。
艦長も少佐も一緒。
うわーい。
少佐の真似をして「いよっしゃー」と喜んでいると、ザフトが攻撃してきた。
日記は後から、生きてたらまた書くことにする。

2月14日
地球に降りる。
ザフトの勢力圏らしいが、しつこいクルーゼ隊から逃れられて皆のんびりしているので、あんまり怖いと思わない。
艦長は古巣の第八艦隊が全滅して、落ち込んでいるそう。
ブリッジのヤツらからの情報によると、泣いていたそうだ。
泣かないでください、艦長!あなたが泣くと俺まで泣きたくなります!
と思っていたら、大気圏用の支援機、スカイグラスパーの前で、マードック軍曹、じゃなくて曹長と、フラガ大尉、じゃなくて少佐が仲良さそうにお喋りしてる。
いいなあ、曹長。俺も少佐とお喋りしたい。

2月15日
砂漠の虎が攻めてきた。
少佐がスカイグラスパーで出撃して、敵の正体を確認してきてくれた。
よく知らないけど、強いヤツらしい。
ていうか、ザフトって強いヤツばっかり。
なんかヘンなヤツらも現れて、艦長と少佐が外に出て行った。
少佐、艦長をしっかり守ってくださいよ、と思っていたら、少佐は銃がヘタらしい。
…少佐~。
連中はレジスタンスで、俺たちはしばらく共闘することになった。
安全なところに案内してもらって、久し振りに外に出ることができた。
レジスタンスのヤツらと少し話をしたら、結構いいヤツらっぽかった。
「おまえらのとこ、艦長も副長も美人でいいなあ」
と羨ましがられる。
ちょっと得意。
交代の時間になったので、艦に戻ろうとしたら、ヤマトとアーガイルとアルスターが修羅場ってるのを見た。
…近頃のお子様ときたら…

2月20日
ブリッジのヤツらが買出しに出かける。
いいなあ~
俺も外でうまいもん食って、羽伸ばしたい。
って言ったら、遊びに行ってんじゃない、とマードック曹長に怒られた。
でもヤマトはレジスタンスの女の子と出かけたんだから、半分遊びじゃないのかなあ。
まあ俺たちも今日はのんびりしていいってことだから、いいけどさ。
ヤマトがいないと不安、っていうヤツもいるけど、俺は少佐がいてくれるから大丈夫だと思う。
ストライクの足元でちょっとさぼってたら、ヤマトがいないのに突然動き出した。
おわわっ! 危うく踏み潰されそうになる。
ヤマトが帰ってきたのか、それにしてはよたよたしててヘン、と床を転がりながら考える。
自軍の格納庫で味方のモビルスーツに踏まれて死ぬなんてあんまりだ。
ストライクに乗っていたのはブリッジ勤務のヘリオポリスの学生だった。
なんだよ~、と思うが、泣いているのでなんかかわいそうになる。
艦の大事なモビルスーツに勝手に乗ったのはたいへんなことなので、そいつは連れて行かれた。
やれやれ、と言いながら皆ストライクの調整作業に入る。
ふと気づくとフラガ少佐が怖い顔をしていた。
…ひょっとして怒ってる?
素人が機体に触ったから?

3月3日
海だ!自由時間には甲板に出てもいいらしい!
暑いし上着を脱いで寛ぐ。
ひょっとしたら艦長も…と期待したのに、忙しかったのか艦長は甲板に出てこなかった。
艦長~働きすぎは体に良くないですよ~

3月4日
近頃気になること。
タッシルから乗り込んできたあのマッチョな男は何者なんだろう!?
なんでブリッジに出入りしてるんだ?
なにやら艦長に助言しているそうだが、ひょっとしてあの男も艦長に気があるんだろうか?
どこからライバルが現れるかわからない。
よそ者に艦長を取られてなるものか!と、艦長をお守りする会のメンバーで盛り上がる。
フラガ少佐もアイツが気に食わないみたいだ。
…え? ということはひょっとして少佐も…?

3月7日
戦闘中艦が引っ繰り返る。
こんなでっかい艦でバレルロールをするなんて、なんてことするんだ、ブリッジのヤツら!
と怒っていたら、命令したのが艦長だと判明。
お流石です、艦長!
素晴らしいご決断で艦の危機を救ってくださいました!
…でも後片付けが大変。
無理矢理出撃していったカガリとかいう女の子が行方不明になって、それも大変。
フラガ少佐も心配そう。
でも自分、少佐は悪くないと思いまっす。

3月8日
カガリちゃんが見つかる。
整備班全員人騒がせなあのコにちょっとヤキモキしてたのに、「いやあ、悪い悪い」と笑いながら戻ってきたあのコを見たら、何故だか全部許せてしまった。
フラガ少佐もほっとした様子。
艦長も格納庫まで様子を見に来てた。
目の下にクマを作って、艦長もカガリちゃんを心配して睡眠不足だったみたい。
…そんなにいろいろ心配しないでください。
艦長は頑張りすぎるから、俺はとっても心配です。

3月23日
またザフトのヤツらに追っかけられる。
もう俺たちへろへろなんだけど、降伏するわけにもいかないしなあ。
なんかでも本気でヤバそうなんですけど?と思っていたら、オーブの領海内に侵入した模様。
警告受けてるはずなのに、どうして前身するんですかー、艦長ー。
ザフトは攻撃してこなくなったけど、オーブ軍に攻撃されてるよーと思っていたら、オーブに入港。
あれれ?
そしてカガリちゃんがオーブのお姫様だと判明。
ひええ。
でも戻ってきたフラガ少佐もヤマトもふらふらだったから、ともかくまたもや命拾い。

4月17日
ヤマトとケーニヒがMIAになる。
信じられない。
アラスカが目の前なのに。
この艦のパイロットは死なないんだと思ってた。
そんなはずあるわけないのに。
シュミレーターで一生懸命練習していたケーニヒの姿を思い出す。
ヤマトのことは正直あんまり好きじゃなかったけど、あいつは絶対大丈夫だと思ってたから、なんかうしろめたい。
もっと親切にしてやればよかった。
戦闘が終わったらいつも俺たちを労ってくれるフラガ少佐も今日はなんにも言わなかった。
艦全体に重苦しい空気が漂っている。

4月20日
同僚と喧嘩して営倉に入る。
喧嘩の原因はヤツが「こんなことになったのは艦長のせい」と言ったから。
訂正しろ、と言ったのに訂正しないから、ぼこぼこにしてやった。
俺もぼこぼこだけど。
一週間の罰だったはずなのに、一日でマードック曹長が迎えに来てくれた。
「あんまり馬鹿やるもんじゃねえぜ」と優しくたしなめられる。
曹長、顔はまあ、アレですけど、オトコですね。
俺、感激しました。

5月5日
艦長たちが査問会に呼ばれた。マードック曹長も一緒に行った。
帰ってきたら、皆怖い顔をしていた。
なにがあったんだろう。曹長に聞いてみたが、詳しいことを教えてくれない。
しかし衝撃の事実が発覚。
フラガ少佐が艦を降りる!
そんな! 少佐までいなくなったらアークエンジェルはどうなるんですか~
副長まで降りてしまうそうで、そしたら艦長ひとりに重責が…
おいたわしや、艦長~

5月8日
アラスカで危うく死にかける。
が、整備班は戦闘中戦況はよくわからないので、サイクロプスの餌食にされかかったことを後から知る。
許すまじ、大西洋連邦。
フラガ少佐が戻ってきたときにはびっくりしたけど、少佐が戻ってきてくれたからサイクロプスから逃げ出すことができた。
やはり少佐は俺たちのヒーローだ。
戦闘が終わってやれやれと思っていると、皆が外に出て行くので俺もついていったら、ヤマトが新しい機体から降りてきた。
なんかふんぞりかえってるように見えた。
でも艦長はヤマトが生きていて嬉しそうだった。
…よかったですね、艦長。

6月13日
艦長からクルー全員にお達し。
降りたい者は艦から降りていいそうだ。
「私のような頼りない艦長に、今までついてきてくれてありがとう」
と艦長は俺達に深々と頭を下げた。
なんて水臭いことを言うんですか、艦長!
ブリッジのヤツらが言うことをきかないんですか!
整備班はあなたの味方ですよ!
解散になってから、俺はすぐに艦長の元に走り、「一生艦長について行きます!」と言おうとしたら、ほかのヤツに先を越された。
くそうっ!しかししっかり握手はしてもらったぞ!

6月14日
こないだ俺と喧嘩した、艦長の悪口言った同僚が謝ってきた。
てっきりヤツは艦を降りると思ったのに、「やっぱり地球軍は許せねえよな」と照れ笑いしてた。
お詫びの印にヘリオポリスにいたときの艦長の生写真をくれた。
珍しく私服姿で、ラベンダー色のスーツを着ているレアものだ。
感激した。
「艦長のために、これからも一緒に戦おうな!と固く誓い合った。

6月15日
フラガ少佐と艦長がくっついた。
薄々予感はしていたが、ブリッジのヤツらがふたりをキスしているところを目撃したらしい。
ショック。
今日は布団をかぶって寝ていたい気分だが、そんなことをしていたら地球軍に撃沈されて、一生目覚めないままになってしまうので、止むを得ず働くが、こうして空き時間に日記を書いていても、インクが涙で滲む。
ううっ。艦長、どうかお幸せに…
そして少佐の乗ったストライクが初出撃。少佐、がんばれ! 艦長のために勝利を!
ほんとは俺も覚悟を決めてるけど、それでも最後まで前向きにがんばるぞ。
これまでだってがんばってきたんだから。
そしたら地球軍が勝手に引き上げていった。
よくわからないけどとにかくまた命拾い。戦闘が終わったら、ヤマトのときみたいにまた皆が外に出て行くので、俺もついていく。
あれれ。モビルスーツが一機増えてる。
降りてきたパイロットはザフトのパイロットスーツを着ているけど、敵じゃないらしい。
ヤマトと見詰め合っている。
な、なにが始まるんだろう。こいつとヤマトとの関係は…!
息を詰めて見ていると、カガリちゃんが飛び出していって、ふたりに抱きついた。
フリーダムと一緒にドックに行くようだけど、あいつの正体は一体…?
そして後から気づいたけど、バスターとバスターのパイロットもこっち側にいた。
あいつ、釈放されたんじゃ…?
下っ端整備兵にはよくわからないことばかりだ。

6月16日
また宇宙に上がることになった。
うわー、俺たちどうなっちゃうんだろ。
そしてオーブの運命は?
でも俺、艦長についてくって決めてるから。
たとえ艦長がフラガ夫人になろうとも…
あ、また涙がほろり。
当然味方になったバスターとヤマトの友達の新型も一緒の模様。
昨日の友軍今日の敵。昨日の敵は今日の友。
ヘリオポリスで急襲受けたときから、数奇な運命に翻弄される俺たち。
そういえば副長が艦を降りちゃったので、操縦士のノイマン少尉が繰り上げ幹部になったみたいだ。
いいなあ。艦長の傍にいられて…

7月11日
艦長が格納庫に来る。
…最近よくいらっしゃる。
フラガ少佐に会いに。
今日俺は聞いてしまった。
艦長が少佐を「ムウ」と呼ぶのを。
ただの「ムウ」じゃない語尾にハートマークのついた「ムウ」だ。
さらば、俺の青春の日々…
艦長、あなたは俺の青春そのものでした…
艦長が少佐とどこまでの関係なのか、賭けていた不届きなヤツらがいたが、そいつらも艦長の「ムウ」ハートマーク付きを聞いて勝敗に関係なく涙していた。

7月12日
フラガ少佐が負傷した。
ストライクもぼろぼろ。
でもモビルスーツはいい。修理したら直るから。
医務室に向かう艦長をお見かけしたら、青ざめていた。
フラガ少佐。命はひとつしかないんですよ。
聞けばストライクを降りて、敵の隊長を追いかけたとか言うじゃないですか!
なんでそんなことをするんですか!
あなたの体はあなたひとりのものじゃないんです!
艦長が泣くことがあったら、俺は宇宙の果てまで追いかけていって、あなたを殴りますからねー!

8月1日
ついに俺も見てしまった。
ほかのヤツらが続々と目撃するなか、俺だけまだだったが、ついに俺も…!
少佐と艦長が通路のど真ん中でキスしてたーーーーー!!!
医務室を抜け出した少佐を艦長が追いかけてて、どうしてだかそういう展開になった模様。
ううっ、ううううっ。
わかってたけど、わかってたけど、やっぱり艦長は少佐が好きなんですねーっ!
そりゃ俺が少佐にかなうわけないけど、けど、けどーーーーっ!
格納庫の隅っこで涙と鼻水で顔をぐしゃぐしゃにしていると、艦長に付き添われた少佐が来て、「花粉症か? お大事にな」とズレたことをおっしゃってくださった。
お大事にするのはあなたです、フラガ少佐。
洟をかんでストライクの整備でもしよう。
コクピットの安全性を高めるとOSの容量を食って機動性が落ちるとか言って、少佐は嫌がるけど、安全第一、恋人持ちになった以上、フラガ少佐にはなにがなんでも生き延びてもらわなくては!

8月15日
食堂でメシ食っててソースを取ろうとしたら、隣のヤツと手がぶつかった。
「あ、すまん」「いや、こっちこそ」「先に使えよ」「そっか、悪いな」「最近静かだよなー」「嵐の前の静けさってやつかね」「充電期間ってことか」などなど、会話をしてから、コイツ誰だっけ?と考える。
格納庫に戻ってから思い出した。
バスターのパイロットだよ!
無茶苦茶馴染んでるよ! あいつ!
むしろずっとアークエンジェルに乗ってたヤマトよりも!

Posted by ありす南水