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江澄と金凌が雲深不知処を去り、魏無羨と藍忘機は藍景儀を連れて沢蕪君と藍啓仁に報告に行った。
ここでも迷惑をかけたと頭を低くして詫びる藍景儀に、無事でよかったと沢蕪君は微笑んだ。
「その様子では大丈夫なようだが、明日は一日休息を取るように」
藍啓仁に申しつけられ、藍景儀は下がった。
「魏嬰は大丈夫かい?」
「俺は別に」
沢蕪君に問われ答えた魏無羨は、藍啓仁も物言いたげにしているのに気づいて居住まいを正した。
「大丈夫です。最初にあの世界を見たときは正直動揺したけれど、そのあと何度も様子を見に行って心の準備はしていたので」
それでもまだ心配そうな顔をしているふたりに微笑んだ。
「本当に、大丈夫でした。自分でも驚くほど」
静室に戻りながら魏無羨は藍忘機と話をした。
「気恥ずかしいから義兄上と叔父上には言わなかったけどさ。俺が平気だったのはここに俺の居場所があるからだと思う」
魏無羨は足下の小石を蹴飛ばした。
「それにあちらでも、おまえが俺の味方でいてくれた」
「そうか」
「だが、藍湛。ちゃんと説明したのに最初は信じてくれなかったぞ」
「それはすまなかった」
ふざけて口を尖らせていた魏無羨は吹き出した。
「謝るところじゃないな」
「そうか」
藍忘機が手を差し出したので、魏無羨はその手を握った。
「魏嬰」
「なんだ」
「おまえも江殿に会いたかったのではないのか」
魏無羨はゆっくりと頭を横に振った。
「師姉が金凌を置いて俺に会おうとして死んでしまったことに、俺は負い目があるんだ」
「それは」
「なんで師姉はあそこに来たんだろうって、今でも思う。俺は金子軒を死なせたのに。恨み言を言うためだろうって思う人もいるかもだが、それは違う。師姉は俺を庇って死んだんだから」
藍忘機が聞いていてくれるので続ける。
「師姉は言ったんだ。俺と江澄と師姉、三人だけが家族だって。でも師姉は金子軒を愛して、金凌が生まれて、ああ、よくわからないことを言っているな、俺は。やっぱり少し疲れたかな」
「魏嬰」
握る手に力を込められた。
「私がいる」
その手を握り返した。
「うん」
それから鼻を啜り上げた。
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