9
金凌が目を開けると、まず目に入ったのが江澄の顔だった。
「叔父上」
口を開くと同時に瞳から涙がこぼれた。
江澄の目も潤んでいる。
金凌は手の甲で涙を拭うと、組んでいた膝を崩した。
「なんともないか」
「大丈夫に決まってるだろ」
「年長者に対して、なんだ、その口のきき方は」
いつものやりとりを、藍思追と藍景儀が見ていた。
「なんだよ」
金凌が立ち上がり不貞腐れると、藍景儀が礼を取った。
「私の不徳でご迷惑をおかけしました。江宗主と金宗主に感謝いたします」
「全員戻ったのか?」
江澄が問う。
「魏先輩がまだです」
藍思追の言葉が合図のように、寝台に横たわる魏無羨の指が動いた。
「魏嬰」
含光君の呼びかけに、魏無羨はゆっくりと目を開ける。
「全員、無事か?」
含光君が頷く。
「魏先輩! すみませんでした!」
誰に対したときよりくだけた物言いだったが、心のままに藍景儀は謝罪した。
「みなに助けられた恩、この藍景儀、生涯忘れません」
「よせよせ、らしくもない」
ゆっくり起き上がりながら、魏無羨は手をひらひらと振った。
「夜狩ではよく、はないが、たまにあることだ。からだもそれほど弱ってなさそうでよかったな」
藍思追が香の火を消し締め切っていた戸を開けると、外の空気が入ってきた。
まだ明るく、良い天気だった。
10
CQL一覧へ戻る