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魏無羨が現れて決起大会に集まった仙師たちの興奮が一気に高まるなか、金凌は必死に母を探していた。
本当に起こったことと違い、魏無羨が攻撃しないので戦いは始まっていないが混乱はしている。
やがて金凌は白い喪服を着て走る母を見つけた。
「危ない!」
突き飛ばされて転びかけた母に金凌は腕を伸ばした。
「あ、ありがとう」
金凌が初めて見る母は目を赤くして、頬に涙の跡が残っていた。
「あなたはこんなところにいてはいけない」
「私、私は阿羨のところに行かなくてはならないの」
阿羨。魏無羨。そうか、やつは母にそう呼ばれていたのか。
「姉上! やっと見つけた!」
外叔父が走ってきて、金凌と目を合わせて頷いた。
「阿澄!」
「姉上。ここは危険だ。離れましょう」
金凌と外叔父は両脇から母を支えた。
「待って。私は阿羨に」
魏無羨を非難する声で、母の声はかき消される。
「姉上。やつは大丈夫です。私とこの若者はやつから、姉上を守るよう言われて来たのです」
「阿羨から?」
「そう。そうです。姉上。魏無羨は大丈夫。大丈夫です」
外叔父は同じ言葉を繰り返す。
琴の音が流れてくる。笛の音も重なる。
「あれは陳情?」
「行っては駄目だ」
金凌は母の腕を強く引いた。
金氏だとはわかるだろうが知らない者からの無礼な行為だ。
正面から金凌の顔を見た母は不思議そうな表情を浮かべた。
「あなたは……?」
「姉上。行きましょう」
外叔父が抱えるようにして母を人の渦から遠ざける。
「姉上。なにも心配いらない。魏無羨のやつは図太く元気にしているし、私も宗主の勤めを果たしている。金凌は」
外叔父は声を詰まらせた。
「金凌は、そこにいるように立派に成長する」
母は再び金凌を見た。
いつの間にか辺りは静かになっていた。
なにもかもが白く消えかけている。
母の姿も薄れていく。
「阿凌」
金凌は初めて自分を呼ぶ母の声を聞いた。
母は腕を伸ばして金凌を抱きしめた。
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