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魏無羨が雲深不知処に落ち着くにあたり、温寧は藍忘機から雲深不知処に近い山の土地を与えられた。
最初固辞したが「魏嬰のためだ」と言われ、温寧はそこに小屋を建て、畑を作った。
意識を取り戻した魏無羨はすぐ元気になって、今は藍忘機の道侶となる儀式に備えている。
旅の過程で魏無羨は金丹を得ていた。
「二度と雲深不知処には行かないって決めたあと、本気で修行してみたらできた」
というのが魏無羨の言だが、普通そういうことはないと思えるので、やはり魏公子は特別な人なのだと温寧は思った。
「温寧ー」
気の抜けた声で名を呼びながら、ロバと共に魏無羨が緑の向こうからやってくる。
「魏公子。儀式の準備で忙しいのでは」
畑の真ん中にいた温寧は鍬を置いた。
「逃げて来た。着たり脱いだり縫い直してまた着て。一日中それの繰り返しだぞ。もううんざりだ」
「藍氏の婚儀ともなれば、色々決まり事が多いのでしょう」
「だとしてもだなー」
魏無羨が地面に座るのを見て、温寧は眉をひそめた。
「魏公子。服が汚れます」
普段着とはいえ彼が今着ているのも上質な着物で、玉の如く含光君に大切にされている証だ。
「温寧、おまえ最近、温情に似てきたぞ」
「そうですか?」
嬉しくなって温寧は笑った。
「菓子を持ってきた。一緒に食おう」
「ありがとうございます。では、お茶を淹れますからどうぞなかへ」
魏無羨を立たせ、温寧は自分の住まいに魏無羨を招き入れた。
小さく粗末な小屋だが、こうして時折魏無羨や藍思追がやってきていろいろ持ってきてくれるので必要な物は揃っている。
「温寧。ひとりでさみしくないか?」
懐紙に包んだ菓子を机の上に置いた魏無羨に問われ、甕から鍋に水を汲みながら温寧は微笑んだ。
「大丈夫です」
「だがここは人のまったくこないところだ」
「だからこそちょうどよいと含光君が選ばれたところです」
「そりゃそうだが、やっぱりさあ」
「私は魏公子よりひとりでいることに強いです」
魏無羨は吹き出した。
「言うようになったじゃないか、温寧」
「はい」
魏無羨が腕を首に巻きつけてくるのが楽しくて、温寧は笑った。